高槻東高校@新聞部

  スポーツ学校である高槻東高校に存在する、数少ない非運動系の新聞部。
  取材拒否にも負けず、悪名にも挫けず、学校新聞を発行しています。
  ライトなラノベコンテスト応募作品 カテゴリの「本文」からどうぞ

5.新聞部@活動報告

「良太! 次はあれに乗るわよ」

 日曜日。さよちゃんと一緒にテーマパークへ。
 猫のキャラクターをモチーフにしたコーヒーカップに乗り、次はメリーゴーランドを要求されている。
「あらあら、連続で回転系なのね。お姉さん、酔っちゃうかも」
「綾瀬部長、馬車でしたら上下運動がないから、まだ大丈夫じゃないですか?」

 そして、後ろから綾瀬先輩と千香の話し声。
 この声がさよちゃんの耳に入る毎に、若干機嫌が悪くなっている気がする。
「ところで良太。あの取材陣2名は、いつまでついてくるのかしら」
「俺が聞きたいよ」

 今回の騒動が千香の内輪もめと判り、生徒会副会長から各部へ直接「新聞部の件は誤情報」だと連絡させた後。
 さよちゃんとの約束通り、日曜10時にテーマパークへ来たのだが、何故か2人にバレていた。
 マジで盗聴器でも付いているんじゃないかと疑ったほどだ。
 そして、2人曰く取材として、ずっと1歩距離を取ってついてくる。

 俺としては、疾しいことがあるわけじゃないので、別に気にしていないのだが……。


 結局、新聞部の部員集めは引き続き行うことになったけれど、評判は回復。
 ……今回のことで、生徒会副委員長に貸しが出来たので、最悪新入部員が入らなかったとしても、何とかしてもらおうと考えているのは、ここだけの話。


 というわけで、これからも高槻東高校の新聞部は、皆の関心を惹く記事を描きながら、それぞれの趣味を織り交ぜた新聞を発行していきます。
 常時部員募集中な、新聞部をこれからもよろしくお願いします。



完 

4.新聞部@対決中-10

「綾瀬部長! 千香! 聞いてくれ! あの元凶がわかったんだ!」

 猛ダッシュで学校へ。さよちゃん家から10分で部室に辿りついた。
「あらあら、良太君。お久しぶり。だめよー、部活サボっちゃ」
「綾瀬部長、すみませんでした。けど、聞いてください」

 ……と、部室を見渡すと、知らない顔の女子生徒が千香の前に座っている。
 怯えているのか、縮こまっているようにも見えなくない。新入部員なんだろうか。だが、今の新聞部に新入部員が来るとも思えないのだが。
「えっと、こちらの方は?」
「良太。あんたの言う、新聞部を貶めた元凶よ」
「へっ?!」

 あまりに唐突過ぎて、千香の言葉が理解できなかった。


「ど、どういうこと?」
「綾瀬部長にはさっき話したけど、この人は3年の近藤春香。生徒会副会長よ」
「生徒会!」

 さよちゃんから元凶じゃないかと教えてもらった、生徒会。しかも、その副会長。
 権力的には、今回の元凶として疑うには申し分ない。けど、どうやって彼女を突きとめたんだろうか。
「この人はね。私の従姉妹で、中学までは仲が良かったのよ。けど、彼女が高校1年生になった時、事件が起きて仲違いしちゃったの」
「で、その彼女が嫌がらせをしてきたと?」
「そう、その通り。多分、この人が犯人じゃないかなーって思ってたのに、良太と綾瀬先輩がどんどん事を大きくしていくから、言えなくなっちゃったけどさ」

 ちょっとバツが悪そうに、次第に千香の声が小さくなる。
「で、橋長先生から、あんたが高木さんの家に行くて聞いたから、そろそろ帰ってくるかなと思って、呼び出しといたの」

 行動パターンが読まれているのが気になるが、それよりも今はもっと大きな疑問がある。
「でも、仲が悪くなったのは2年も前だろ? 何で今さら?」
「……許せなかったの」

 副会長が小さな声で、しかしはっきりと言った。
「何よ、新聞部のWEB新聞。あれだけ私がマッチョ×マッチョの良さを熱弁したのに、ショタ推しなんて」
「は?」

 副会長から、予想外の台詞が出てきて困惑する。
「何言っているの! マッチョなんてありえないし。女の子が一番良いに決まってるじゃない!」
「じゃあ、何で違うの描いてるのよ!」
「それは、こっちにも事情ってものがあるのよ!」

 副会長と千香が言い合いになる。
「あのー、2人が仲が悪くなった理由って……」
「作品の方向性の違いよ!」

 どうやら、2人は中学時代に一緒に本を描いていたらしい。
 そして、今回の一件がただの内輪もめだということがわかった。

4.新聞部@対決中-9

「と、ところでさ。新聞部が悪評流されてるって、怒ったんだよね?」
「あ、あぁ」

 さよちゃんのお母さんが作りだした気まずい空気を嫌ってか、かなり強引な話題転換がきた。
「で、それを風紀委員が率先してやっていると思っているわけね」
「……まぁ、事実だしな」

 せっかく和解したばかりだが、そもそもの発端となる話のため、ここはどうしても譲れない。
 だが、二の舞になるわけにはいかないので、極力冷静に。言葉を選んで話す。
「それなんだけどさ、大元は風紀委員じゃないと思うわ」
「どういうことだ?」

 思わずさよちゃんに詰めよってしまう。
 さよちゃんが顔をそむけながら、話を続ける。
「うちの委員長って、面倒臭いこと嫌いだから、自分から率先してそういうことをする人じゃないの」
「んー、そう言えばそんな噂は、どこかで聞いた気がする」

 確か、去年新聞部がいろいろ問題になった時、生徒会が風紀委員に指導するように言って、風紀委員長がさよちゃんに丸投げしたとかなんとか。
「で、うちの委員長が何か風紀委員のメンバーに指示してるってことは、教師か生徒会のどちらかから、よっぽど強く言われていると思うの」
「ふむ」
「で、うちの学校の風土から言うと、生徒の自主性を重んじるから、教師が風紀委員に何か指示するのってかなり少ないのよ」

 ということは、今回の黒幕は風紀委員に指示を出している生徒会か。
「だからね。表立って動いているように見えるのは風紀委員かもしれないけど、うちに何かしても解決しないと思うのよ。
 私は具体的に誰から風紀委員に指示が出ているかは知らないけど、ちょっと調査するところを変えた方が良いんじゃないかな」
「わかった。さよちゃん、いつも本当にありがとう」

 やるべきことが定まり、急にやる気が復活してきた。
「俺、学校行ってくる」
「えぇ、わかったわ」
「さよちゃんも、明日から学校来る?」

 小さく頷くさよちゃん。
「今日は急に押しかけてきて、ごめんな」
「いいわよ」

 部屋を出ると、すぐ傍でお母さんが立っていた。
 ……やっぱり、聞き耳立ててたよ。
「すみません、御暇させていただきます」
「あら、もういいの? 何ならおばさん1時間くらい買い物に行って来るけど」

 どういう意味だろうか。……いや、つっこまないでおこう。
「いえ、ちょっと用事が出来たので」
「あら、それは残念」

 急いで靴を履く。久々に気力が充実している感じがする。
「お邪魔しました」
「また来てねー」

 さよちゃんのお母さんに見送られつつ、エレベーターに。
 学校まで急いで戻った。

4.新聞部@対決中-8

「こ、こんにちわ」
「な、な、何であんたがうちにいるのよー! 平井良太!」

 目を丸くして驚くさよちゃん。そりゃそうだろう。俺がさよちゃんだったとしたら、どの面下げて来たんだって思う。
「平井君って言うのね。せっかく来てくれたんだから、上がっていく?」
「あ、いえ。流石にそれは」
「そう? 男の子のお友達が家に来るなんて初めてだから、おばさん嬉しくって」

 そういうものなんだろうか。だが、これがもし父親だったら間違いなく追い出されているだろうが。
「ちょっとお母さん。どういうこと?!」
「平井君だったかしら。うちのインターホンを鳴らすか鳴らさないかで、10分以上悩んでいたから見てられなくて」

 エレベーターから降りてすぐ俺に声をかけてきたと思ったのだが、実はもっと前から観察されていたのか。
 ちょっと、いやかなり恥ずかしい。
 だが、ここまで来たんだ。もう、恥ずかしいとか言ってられない。こうなったら、やるべきことをやるだけだ。

「で、一体何しにきたのよ」
「いや、あのさ。前にさよちゃんに酷いこと言っちゃったからさ……」

 話途中だが強い視線を感じ、思わずそちらに視線を動かす。
 廊下の奥、リビングだろうか。扉の隙間から、さよちゃんのお母さんがこっちの様子をうかがっている。
 そして俺の視線に釣られて、さよちゃんも後ろを振り返り、視線に気づく。
「……ちょっと、ここはやめましょう。靴脱いで上がって」
「えっ?!」
「いいから、早く!」

 言われるがままに急いで靴を脱ぎ、すぐ右の部屋に入れられる。
 机に本棚、そしてベッド。オフホワイトで統一された家具と、ウサギのぬいぐるみ。
「もしかして、さよちゃんの部屋?」
「そうよ。人の部屋をあんまりジロジロ見ない」
「ごめん。女の子の部屋なんて初めてきたから、つい」

 さよちゃんがベッドに腰掛け、俺に椅子を薦めてくる。
 が、椅子には座らずその場で土下座する。
「さよちゃんゴメン。俺、さよちゃんのことを何もわかってないくせに、酷い事ばかり言って」
「……」
「俺、橋長先生に聞いたんだ。さよちゃんが新聞部のために、どんなことしてくれているのか。それなのに……」

 ――すっ

 頭を下げたままなので見えてはいないが、多分さよちゃんが立ちあがったと思う。

 ――ごすっ!

「――ぐっ」

 中々に重い一撃が脳天にきた。
「はい、もういいわよ。その土下座はやめて」

 おそるおそる顔を上げると、さよちゃんの右手には分厚い国語辞典。……あれで殴られたのか?
「まったく、あんたは……」
「ごめん」
「あ、まだ許してないわよ。土下座はもういいって言ったけど」

 うっ……とりあえず、言われた通り土下座はやめ、示された椅子に座る。
「許して欲しかったら、罰として1日私をもてなして」
「へっ?」
「今度の日曜日。10時に舞洲のテーマパーク入口に集合だからね!」

 ん? それってもしや、デートというやつではなかろうか。
「さよちゃん、もしかして」
「うるさーい! 毎晩泣きじゃくるくらい、めちゃめちゃショックだったんだからね。これで許してあげるって言ってるんだから、観念して従いなさい」

 さよちゃんが顔をそらし、横を向いた時にドアが開く。
「平井くーん、紅茶で良いかしら」

 さよちゃんのお母さんが、ニヤニヤしながら部屋に入って来る。
 うわ、絶対聞き耳立ててたよ、この人。

「デート? デート? 楽しそうね。小夜子、男の子とデートなんて、初めてじゃないかしら」
「お母さん、うるさい! 早く出てって」

 無理矢理お母さんを部屋から追い出すさよちゃん。耳まで真っ赤になっている。
「ふふっ、青春ねー」

 お母さんのせいで、非常に気まずい空間が出来てしまった。

4.新聞部@対決中-7

 学校から歩いて15分。
 住宅街の一角にあるマンション。この7階にさよちゃんが住んでいるらしい。
「お、こっから学校見えるんだ」

 マンションの柵の上から南東を眺めると、小さく学校が見える。
 今も部室では、きっと千香と綾瀬先輩が新聞を作っているんだろう。

 現実逃避を終え、少し廊下を歩く。
 703号室の扉に『TAKAGI』と描かれたネームプレートが掛けられている。
 間違いなく、さよちゃんの家だろう。
 目の前にあるインターホンを押せば、さよちゃんに会えるかもしれない。が、何を言えば良いのだろう。
 そもそも、俺はここに何をしに来たんだろう。
 何の策も無いのに、ただ自分の罪悪感を消したいがためだけに来てしまった。

「うーん……」

 扉の前を行ったり来たり。
 何も考えが浮かばない。それよりも今は、さよちゃんに何て謝るのかよりも、インターホンを押すか、このまま帰るかで悩んでしまっている自分が情けない。
「あの、うちに何か用ですか?」

 エレベーターホールから、40歳くらいのおばさんが現れる。
 先ほどの発言からすると、きっとさよちゃんのお母さんだろう。

 どうする? 「さよちゃんを登校拒否にした本人ですが、謝罪させてください」とでも言えばよいのか。
「あの、小夜子のお友達かしら」

 無言のまま困っていると、同じ学校の制服を着ているからか、お母さんから話を進めてくれた。
「はい、同じ学年の平井良太と申します。先生から高木さんの様子を見てくるように言われまして」
「そうなの、小夜子と同じソフトテニス部の方かしら。どうぞ、上がって行ってくださいな」

 俺から嘘は言っていない。新聞部の先生から様子を見に行くように言われたのは事実。
 さよちゃんが所属するソフトテニス部の顧問に言われた……と、お母さんが勝手に勘違いしただけだ。

 今の俺の心は後悔の念で満たされていて、これ以上余計な感情が入る余裕がない。
 とりあえず、小さなことでも自分を正当化して、心がパンクしないようにしなければ。

 お母さんが扉を開き、中へ招いてくれる。
「小夜子、ただいま。今、あなたの……」
「おかーさん、プリン買ってきてくれたー?」

 お母さんの声を遮り、プリンを求めるさよちゃんが扉の奥から現れた。
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ラノベ執筆の勉強中です。ファンタジー系好き。普段は同人ゲームとか作ってるド素人ですが、よろしくお願いします。ちなみに中身はアニメとゲーム好きなシステムエンジニアです。 好きな作品:スレイヤーズ、爆れつハンター

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