高槻東高校@新聞部

  スポーツ学校である高槻東高校に存在する、数少ない非運動系の新聞部。
  取材拒否にも負けず、悪名にも挫けず、学校新聞を発行しています。
  ライトなラノベコンテスト応募作品 カテゴリの「本文」からどうぞ

4.新聞部@対決中-6

「お前、高木のこと知らないのか? 去年生徒会から新聞部を廃部にするように言われた時、必ず更生させると言って、あのコが新聞部の存続を訴えてくれたんだぞ」

 何だ? どういうことだ? 何か根本的に話しがズレている気がする。高木さんが新聞部を守ってくれた?
「どういうことですか?」

 頭が理解を拒否しているのか、同じ質問を繰り返してしまう。
「だから、高木が居なかったら、新聞部はもっと早く潰されてたってことだ」

 ……何か固いもので頭を叩かれたような感覚に陥る。
 彼女は、さよちゃんは本当に新聞部を良くしようとしてくれていたんだ。
「それは、本当ですか?」
「本当だよ。WEB新聞作る時だって、前もって高木君が私のところへ来て、手続き全部済ませていったし、風紀委員長代理として生徒会に出て、直接意見も述べている。
 何なら、生徒会顧問や風紀委員顧問の先生方に聞いてみれば良いんじゃないか?」

 橋長先生がここまで言っているんだ。きっと、真実なんだろう。
 それなのに俺は……さよちゃんを敵だと思い込み、一方的に責めてしまった。

 何故ちゃんと裏を取らずに、あんなことを言ってしまったんだろう。後悔の念が心を駆け巡る。

 時間を戻せるのなら、数日前に戻して自分を止めたい。
 以前とはまた種類の異なる黒い感情が俺を満たし、いっそ死にたくなる。
「何かよくわからんが、お前が落ち込むことと、高木が欠席していることが関係あるのか? あるなら何とかしてきてくれ」

 部活同様、面倒臭いことは生徒に任せる先生の悪い癖が出た。
 いや、確かにさよちゃんが欠席していることと無関係では無さそうだけど……俺はさよちゃんに何か出来るんだろうか。
 後悔と反省はしたが、謝罪は出来ていない。新聞部の評判を落として回っている風紀委員の対応も出来ていない。

 ただ、さよちゃんを悲しませただけで、俺は逃げてしまった。部活を投げてしまった。
 謝って、さよちゃんは許してくれるだろうか。千香や綾瀬先輩は今の俺をどう思っているんだろうか。

 職員室の片隅で1人ずっと考え込んでいたからか、気付くと他の先生方から注目されてしまっていた。
「平井! いいからお前は高木のところへ行って来い。ほれ、高木の家の住所だ」

 ……かなり強引にさよちゃんの家の住所が書かれたメモを握らされ、職員室を追い出された。

 俺にどうしろってんだよ。
 あまり生徒の寄り付かない、職員室前の廊下。誰が助けてくれるわけでもなく、ただ時間だけが過ぎていった。

4.新聞部@対決中-5

 さよちゃんと喧嘩した。
 いや、喧嘩ではないな。一方的にこっちが黒い感情をぶつけただけだ。

 自室のベッドの上。天井を見つめたまま、今日の出来事を振り返る。
「何で、新聞部に対してあんなに熱くなってしまったんだろう」

 誰に言うわけでもなく、自問自答する。
 何となく少し視線を動かすと、棚の上にあるバスケットボールが視界に入った。
「そう、部活なんかに熱くなると、ろくな事がないんだ。適当にやって、適当に周りに合わせとくくらいがちょうど良いんだ」

 無意識に右手で左肘を押さえる。
 何回投げても決して外すことなく、何度でも決める自信があった3ポイントシュート。
 もちろん、その自信に繋げるために練習を何万回も繰り返した。。

 チームの勝利のために、自分の成長のために、そして単純に好きなバスケのために練習に明け暮れた。
 だけど、その結果得られたものは何一つなかった。

 部活に対するチームメイトとの温度差、不協和音、そしてチームからの孤立。
 顧問は俺を試合に出すが、俺にパスを出すメンバーは誰も居なかった。
「くそっ! 何で今頃こんなこと思い出すんだ」

 電気を消して、そのまま眠ることにした。


 次の日。授業が終わって、即帰宅する。もう、部活に行く気分ではなかった。

 その次の日も、即帰宅。だが、これもそろそろ終焉だろう。

 また次の日。
「平井ー。橋長先生から呼び出しがかかっとるぞー」

 ついに来た。担任の先生から、放課後に新聞部顧問の橋長先生のところへ行くように言われてしまった。


 この高槻東高校は公立なのに伝統的なスポーツ強豪校。
 表立って明言されているわけではないが、部活動の参加がほぼ強制となっており、ほぼ全員が何らかの部活に所属している。
 そのため、2日連続部活をサボったことで、ついに顧問が動き出してしまった。

「失礼します」

 仕方なしに、職員室に居る顧問を訪ねる。
「平井ー、どーした。最近部活に出てないらしいじゃないか」
「えぇ、まぁちょっと」

 基本的に放置主義の顧問だが、それでも責任者。
 部活に出るようにという話と、何かあれば相談してこいと、ベタな話が10分ほどあり、ようやく解放される。
「そういえば、平井と仲の良い風紀委員の高木さん何だがな」
「いや、別に仲が良いわけではないですが」

 周囲から仲が良いように見えているのであれば、それだけ高木さんの演技が上手なんだろう。
「……そうか? お前らいつも和気藹々としてたじゃないか」
「気のせいですよ。で、その高木さんがどうかしたんですか?」
「あぁ、彼女はここ数日ずっと学校に来てなくてな。電話で理由を聞いても教えてくれんし、何か知らないかと思ってな」

 高木さんが学校に来ていない? もしかして、俺が一方的に言い過ぎて傷つけたからなのだろうか。
「あのコには、新聞部はかなり助けてもらってるだろ。あのコのおかげで新聞部が活動できているんだからな」
「それはどういう意味ですか?」

 橋長先生が言っているのは、毎週の原稿チェックのことだろうか。
 だが、先生から言われたのは、俺の知らない事実だった。

4.新聞部@対決中-4

「なぁ、さよちゃん……いや、高木さん。今まで楽しかったよね? 滑稽な俺を見て」
「えっ?!」

 高木さんが目を丸くし、驚いた表情を作る。
「バカにしてたんだろ? 俺を、そして新聞部を。私の助言を信じ込んでバカなことやってるって」
「な、何を言っているの?」

 自分のたくらみが、ついにバレたためか、血の気が引いたような顔になっている。
「悪かったな、毎週原稿チェックさせて。だが、これからも俺たちは活動するぜ。風紀委員長に直接原稿持って行って」
「……」

 嫌な言葉がどんどん口からでる。何を考えているわけでもない。何か狙いがあるわけでもない。ただ、今の自分の心にあるものを吐き出しているだけだ。
 多分、これはただの八つ当たり。だけど、止まらない。止められない。
 言葉を発すれば発する程、また俺の心に黒い靄がかかる。吐き出しても、吐き出しても靄は晴れない。

 頭の中で、『違う』と叫ぶ俺が居る。泣きそうな彼女の顔を見て、『もう止めろ』と叫ぶ俺が居る。
 だけど、俺の心の堤防は既に決壊している。今まで心の奥底にあった、小さな小さな疑念が黒い悪意に変わって、どんどんこみ上げてくる。

 ――バタンッ

 俺の黒い言葉が言い尽くされる前に、彼女は部室を出て行った。


「良太、らしくないんじゃない」
「……」

 らしくない……暴走する千香や綾瀬先輩を止め、風紀委員にいいように踊らされるのが、俺らしいのだろうか。

 そうだ。よく考えたら、提案したのは高木さんだが、実行に移したのは千香や綾瀬先輩だ。
 ここにも敵が居たんじゃないか。
 何だ、結局俺1人か。

 やっぱり俺にチームプレイなんて無理だったんだ。
 いや、あの時と一緒で、チームなんて必要なかったんだ。

 もう、無理矢理頑張らなくてもいいや。
 あの時の俺の考えのままが正しいんだ。

「帰ります」

 言って、教室を出た。
「ちょっと、良太! どこに……」

 後ろから千香の声が響いたが、振り返りすらせずに、俺はそのまま帰路についた。

4.新聞部@対決中-3

「おねーさん、帰ってきたわ」
「えっと……綾瀬部長。何をどうしたら、そんな結果になるんですか?」

 風紀委員に無茶な3本勝負を持ちかけに行った綾瀬先輩。
 意外に早く部室へ帰ってきた。

 何故か、さよちゃんを連れて。

「ふふふ、私の提案した3本勝負。風紀委員長に直談判してきたわ」
「おぉー。流石、綾瀬先輩ですね」

 千香は尊敬のまなざしで見ているが、あの内容が通るとは思えない。
「で、その風紀委員長は何て言ったんですか?」
「風紀委員長は、こう言ったわ。『高木君、任せた』と」

 投げたー! 風紀委員長めんどくさがって、さよちゃんに全部投げたー!

 まぁ、元々生徒会から新聞部の原稿チェックの話があった時も、さよちゃんに全部投げたらしいし。
 どこも組織のトップとは、そんなものなんだろうか。
「で、私がここに来ることになったのよ」
「かなり嫌そうだな」
「えっ?! 別にいつも通りだけど……」

 いつも通りと言えば、いつも通りのさよちゃんだが、つまりそれは俺が気付いていなかっただけで、今までも新聞部に来るのはかなり嫌なことだったということか。
「綾瀬部長、どうします? さよちゃんが来たところで何も解決はしないと思いますが」
「待って。そもそも、何で綾瀬先輩はうちに……風紀委員に勝負なんて持ちかけてきたの?」

 話……伝わっていないのだろうか。
「あらあら、高木さん。さっきも風紀委員長に言ったじゃない。王道バトルは5本勝負って」
「いや、その意味もよくわからないんですが、それは置いといて。そもそもの勝負の目的は何なんですか?」

 一体、綾瀬先輩は風紀委員で何を話したんだろうか。
「風紀委員に謝罪してもらうためよ」
「千香ちゃん。風紀委員が新聞部に謝らないといけないことって何かしら?」

 ――カチン

 謝らないといけないことが何か……だと? 風紀委員が新聞部に対して行ってきたことを、一番よく知っているのがお前じゃないのか?
 今まで最前線で新聞部に接してきたのは、お前だろ?
「ふざけるなっ!」

 思わず叫んでしまった。言葉を発して自分でも気付いたが、怒りで声が震えている。
 そして、ただただ自分の怒りを目の前にいる少女にぶつけてしまいたい欲求に駆られる。

 ぶつける先はこの少女なのか? 風紀委員という組織じゃないのか?
 だけど、その風紀委員という組織の代表として、彼女はここに居る。なら、ぶつけてもいいんじゃないのか?
 ましてや、俺を掌の上で転がすように動かしてきた、まさにこいつは実行犯……。
「何? いきなりどうしたの?」

 困惑した表情を作り、こいつは俺を見定めてくる。

 そう、きっと全てこいつが悪いんだ。こいつが俺を、新聞部をおかしくしたんだ。

4.新聞部@対決中-2

「風紀委員長を拉致しましょう」
「千香、流石にそれはやりすぎ」

 対風紀委員との作戦会議。
 風紀委員と争いになるかもしれないが、あくまでそれは手段であり、目的は新聞部の悪評を撤回すること。
 まず、どうすれば新聞部の悪評が撤回されるのかを考えなければならない。

「おねーさんは、風紀委員との3種バトルを提案するわ」
「どういう意味ですか?」
「新聞部と風紀委員の3回勝負で、先に2勝した方が、予め決めた要求を相手に行使させることが出来ることにするの」

 言いたいことは何となくわかるが、何をする気なんだろうか。
「ちなみに、具体的にはどんなことをするんですか?」
「そうね。新聞部が勝った場合、各部に通達している新聞部のことを撤回してもらうのと、新聞部に正式に謝罪してもらうわ」

 おぉ、綾瀬先輩にしては結構まともな意見。
「そして勝負の内容は、1回戦が風紀取締り対決」
「よくわかりませんが、風紀委員に有利そうな対決ですね」
「えぇ、1回戦は風紀委員。2回戦は新聞部が得意な勝負をして、3回戦は双方不得意な内容で勝負よ」

 ……最初から双方不得意な内容1本勝負で良いんじゃなかろうか。
「で、風紀取締り対決の内容は、仲が良すぎる美少年たちをより多く見つけられた方が勝ちよ」
「はい?」
「初めはふざけ合っているだけだった。ところが、視線と視線が交差する度に、肌と肌が触れ合ううちに、いつしかそれは恋へと変わっていく。そんないけない美少年を指導するための取り締まり対決よ」

 ……1番風紀を乱しているのは、綾瀬部長。あなただと思います。
「あ、ちなみに美少年限定だから。美少年と認められなければ、ポイントは加算されないわ」

 とりあえず、最後まで聞いてみることにした。
「そして、2回戦。これは新聞部に有利な、表現対決」
「ほう」
「女の子の匂いを嗅いで、その匂いをソムリエの如く的確に表現するの。気高く昇華された我々の表現は、もはや文学と言っても差し支えないわ。まさに高校生の対決としてふさわしい」

 ……やっぱり止めるべきか。流石に聞くに堪えなくなってきた。
「そういうことなら、私の出番ね!」
「あの……千香?」
「美少女からほのかに香る芳しき匂い。ほのかにシャンプーの香りと、汗の匂い。そして青い果実のような未熟な美少女の香りなら、どんなものでも嗅ぎ分けれるわ」

 千香……匂い当て対決じゃなくて、表現対決って先輩は言ってたよ。
「最後に、3回戦。双方の主張を裁判員に聞いてもらい、どちらの言い分が正しいか判定してもらう、演説対決」
「いや、それだけでよくないですか」
「あらあら、良太君。本来バトルの王道は5本勝負よ。だけど、人員不足で3本にしたの。だから、これ以上は譲れないわ」

 どうしよう。どこからつっこめば良いんだろう。
 流石に前2つの意味がわからないのと、そもそもこんな対決を風紀委員が受けてくれるとも思えない。
「ではでは、おねーさんが風紀委員に対決申し込んでくるわねー」
「いやいやいやいや、ちょっと待ってください!」

 俺の止める声も聞かず、綾瀬先輩は部室を飛び出してしまった。
カテゴリー
最新コメント
ラノベ執筆の勉強中です。ファンタジー系好き。普段は同人ゲームとか作ってるド素人ですが、よろしくお願いします。ちなみに中身はアニメとゲーム好きなシステムエンジニアです。 好きな作品:スレイヤーズ、爆れつハンター

ライトなラノベコンテスト

QuickBooksララノコン情報

アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

  • ライブドアブログ