高槻東高校@新聞部

  スポーツ学校である高槻東高校に存在する、数少ない非運動系の新聞部。
  取材拒否にも負けず、悪名にも挫けず、学校新聞を発行しています。
  ライトなラノベコンテスト応募作品 カテゴリの「本文」からどうぞ

4.新聞部@対決中

「ただいまー」
「あらあら、良太君。尋常じゃないくらい、顔色が悪いけど大丈夫?」

 風紀委員で決定的な言葉を聞いてから、とりあえず新聞部へ戻ってきた。
「で、良太。風紀委員の調査はどうなったの?」

 綾部先輩と異なり、千香はとにかく結果が気になるようだ。
 さて、どうすべきだろう。と言っても、今の俺には正直にありのままを話すしかないが。

 ……

「つまり、風紀委員長と思われる人物が、新聞部に写真を悪用されると、各部に言いふらしてるってことなのね」
「……そうだと思う」
「許せないわね」

 実際、各部にどういう風に伝わっているのかはわからないが、これまでの話を統合すると風紀委員が犯人なのは間違いなさそうだ。
「何でだよ……」

 そう認めてしまうと、急に怒りが湧いてきた。
 今まで、少なからず新聞部と関わりのあった風紀委員。そして、担当のさよちゃん。

 さっき運んでいた『風紀を乱す要因調査結果』という資料にも、新聞部のことが書いてあるんだろう。
 新聞部改善のために協力してくれていた……と思っていたのは俺だけで、実際は真逆だった。

 思えば、WEB新聞を提案したのも、さよちゃんだ。
 あのWEB新聞で、一時期さらに新聞部の評判が悪くなったりもした。

 そして廃部の話を俺にしたのも、さよちゃん。
 あの話から、金髪ツインテールでメイド服で女装という、高校生活始まって以来の屈辱を味わうことになった。

 そうか……全ては、風紀委員のさよちゃんの掌の上で転がされていただけだったのか。


 無様にもがく俺の姿を見て、楽しんでいたのか。
「綾瀬部長、千香! 風紀委員と戦いましょう!」
「そうね。遂に、おねーさんが本気を出す時が来たようね」


 一方的かもしれないが、信頼していたさよちゃんに裏切られた感じがした。
 そして、俺は新聞部を守るため、風紀委員と戦うことを強く決意した。

3.新聞部@調査中-5

 さよちゃんから風紀委員の情報を聞き出すため、どう切り出したものかと考えたものの、よく考えたら相手はさよちゃん。
 いつも通りの俺で良いじゃないか……というわけで、自然体で突撃することにした。

 さよちゃんが生徒会室から出てきたのは確認済み。
 彼女が居る校舎側へダッシュで戻る。
 そして、あえて風紀委員であるさよちゃんを、後ろから走り過ぎる。
「こらー! そこの男子! 廊下は走らないの」

 ついさっき聞いた台詞とほぼ同じ言葉が、俺に向かってかけられる。
「はーい……って、さよちゃんか」

 振り向き様に、さよちゃんに気付いたフリをする。
「ちょっと、平井良太! 廊下は走っちゃダメなの知ってるでしょ!」
「ごめんごめん。ちょっと、急いでたんだ」

 さよちゃんを見ると、さっき生徒会室でコピーしたであろう、大量の資料を持っていた。
 これはチャンス!
「ところで、その荷物大変そうだな。半分持つよ」
「えっ……何なの? その行動。あんたいつからそんなキャラになったのよ」

 アレ? 流石にあからさま過ぎたのだろうか? ごく自然に振る舞ったつもりだったのだが、さよちゃんのリアクションが予想と違った。
「いやいや、俺は昔から困っている女性は放っておけない人間だぜ。特に可愛いコが困っていたら、助けるに決まってるじゃないか」

 しまった。取り繕うのに必死で、自分でも訳のわからない言葉が出てしまった。
 多分、16年生きてきた中で、今までこんな発言は1度もしたことがないと思う。
「……じゃない」
「えっ? ごめん。聞き取れなかったから、もう1度言ってくれる?」
「何でもないったら!」

 前にもこんなやりとりがあった気がする。前も、さよちゃんが小声で何か言って、聞き返したら顔を真っ赤にして怒られた。
 今回は、前回よりも怒っているのだろうか。さよちゃんが耳まで真っ赤になっている。
「それより、あんた急いでるんじゃないの? こんなところで油売ってて、いいの?」
「へっ? あ、そう、そうだね。じゃ、じゃあ悪いけど、先に行くよ」
「うん。走らないようにね」

 返事替わりに手を振り、そのまま真っ直ぐ歩く。
 ダメだ、どうやら俺は根本的にこういう行動に向いていないらしい。
 途中からめちゃくちゃになって、急いでいる設定も忘れていた。

 とりあえず、新聞部に関連するかはわからないが、『風紀を乱す要因調査結果』――さよちゃんの持っていた資料のタイトルは見えた。
 一先ず、風紀委員会室横の空き教室に潜み、風紀委員の様子を探る。


 暫くすると、一際大きな声が聞こえてきた。今までの様子から、おそらくこの声が風紀委員の委員長だろう。
「あ、鈴木ー。例の新聞部の写真の件。今まで風邪で女子ソフトテニス部の部長が休んでたから、今日にでも連絡しといてくれ。悪用されるってことを、ちゃんと強調しとくんだぞ」
「わかりましたー」

 ……なんだ? 今のやりとりは。これって、もう完全に黒じゃないか。
 どうする。どうすればいいんだ?

「ただいま戻りましたー」

 重い荷物を持って遅い足取りとなったさよちゃんが、ようやく帰ってきたようだが、俺はもうどうでもよかった。

3.新聞部@調査中-4

「高木さん、この資料を30部コピーしてきてくれるかしら」
「はい、わかりました」

 柱の影から、こっそり風紀委員会室を偵察する。
 何かはわからないが、さよちゃんが部屋を出るようだ。とりあえず、空き教室に隠れてやり過ごす。

 さて、どうしたものか。
 1.このまま何となく風紀委員会室の様子を探る。
 2.顔見知りのさよちゃんに、それとなく話を聞く。
 3.疲れたから部室に帰る。

 心情的には、間違いなく3の「帰る」なのだが。
 段々、何してんだろ? という気持ちになってくる。

 とは言え、このまま帰ると千香に何を言われるかわからない。

 仕方が無い。気乗りはしないが、一番有益そうな2の「さよちゃん攻め」をすることにした。


「高木さん、今日も風紀委員? 大変ね」
「あはは、でもやりがいあるし頑張るよ。さよならー」

 さよちゃんの友達だろうか。手短に挨拶し、足を進めている。


「こらー! そこの男子たち! 廊下は走らないの」
「はーい」
「まったく」
「あははー、さよちゃんに怒られちゃったー」

 流石、さよちゃん。怒られた相手が笑っている。……いや、風紀委員としてはダメなんだけどさ。


「失礼します」

 さよちゃんが同じフロアにある、生徒会室へ入っていった。
 そういや、コピーがどうこう言ってたな。うちの学校は職員室と生徒会室、そして購買の3箇所にしかコピー機がない。

 流石に生徒会室へ用事がある生徒は少なく、こんな場所に立ち止まっていると目立ってしまう。
 ここは通り過ぎて、遠くでさよちゃんが出てくるのを待つのが正解だろう。


「この辺でいいか」

 生徒会室のドアが遠目に見える渡り廊下。真下に中庭が見え、女子生徒3人が歩いているのが見える。
 とりあえず、ここで生徒会室のドアを見つつ、しばし待機。

「……俺は一体、何をしているんだ?」

 待っている間に、今日の行動を振り替えると、完全にストーカー。
 知らない仲ではないのだから、変に後をつけずにスパっと聞いてしまった方が良いのかもしれない。
 というか、そうすべきだろう。さよちゃんが生徒会室から出てきたら、声をかけよう。

 ……

 生徒会室のドアが開き、中からさよちゃんが出てきた。

 さて、まずはどうやって話しかけようか。

3.新聞部@調査中-3

「良太! 大変、大変よ」

 珍しく、千香が部室に走ってきた。
「どうしたんだ? そんなに慌てて」
「わかった。わかったのよ」
「何が?」
「写真。写真のことよ」

 写真――ここ数日の取材拒否のキーワード。
 そして判っているのは、非運動系の部活が今まで通り取材を許可してくれるのに対し、運動系の部活が完全取材拒否であること。
「一体、何がわかったんだ?」
「友達のクラスメイトの先輩に教えてもらったんだけどさ」

 そこはもう、知人で良いんじゃないか? まぁどうでもいいが。
「風紀委員よ、風紀委員。新聞部の変な噂の出元」
「変な噂? とりあえず、順を追って話してくれるか?」

 興奮気味の千香を観て、綾瀬先輩も近づいてきた。
「良太が取材拒否された理由だけど、風紀委員が各部活に『新聞部は取材と称して、躍動感溢れる筋肉を、ピチピチ弾ける肉体を、そして苦しみに耐えるその顔を写真に納めてコレクションしてる』って言い回っているらしいの」
「なんだってー!」

 ……ん? よく考えたら、あながち間違っていないような気がするんだが。
「あらあら、それは失礼ね。私は美少年の写真しか収集していないわ」
「そうですよ。私も可愛い美少女の写真しか集めてないですよ」

 おい。

「そうそう、男子バレー部の1年生に、可愛い男の子が入ったらしいわね」
「ソフトボール部にも可愛い女の子が居るらしいですよ」

 とりあえず、止めさせよう。この会話も、コレクションも……。
「あー、とりあえず、取材拒否される心当たりがあるんだな」
「ないわよ。さっきも言ったけど、私は美少女にしか興味がないわ」

 いや、そんなことを堂々と宣言されても。
「そうねぇ、とりあえず新聞部の悪評を言いふらしている元凶。風紀委員の様子を探りましょうか」

 ……まぁ、悪評と言えば悪評だけど、正当評価でもあると思うのだが。
 そして、本当の元凶は貴方たち2人だったりするんではないだろうか。

「さぁ、良太! 風紀委員会メンバーの行動パターンから、好きな食べ物まで、些細なことでも良いから調べてきなさい」
「何で俺なんだよ」
「え、じゃあ次の新聞のイラスト書いてくれる?」
「……風紀委員の偵察、行ってきます」

 疲労感たっぷりで、部室を後にした。

3.新聞部@調査中-2

「あー、新聞部の方ですよねー。試合も近いんで、やっぱり取材お断りさせてもらえますか」

 まただ。今日はラクロス部に断られてしまった。
 何故、こんなにも取材拒否が続くのだろうか。

 しかし、悩んでも答えが出るわけでもないので、次の部活へ行く。
 予定よりかなり早くなってしまうが、大丈夫だろうか。


 
「こんにちわー。新聞部の方ですよね。大会前なんで、取材は20分くらいで良いですか?」

 久々に取材に応じてもらえた。
 今回は、我が新聞部同様、非スポーツ系の吹奏楽部。対応してくれた副部長の鏡さんは、笑顔がとてもキュート。だけどスカートが短いせいか、気付けば視線が脚にいってしまう自分が情けない。

「では、事前にお渡しさせていただいた、質問事項についてお話を伺わせていただいてもよろしいですか」

 この時期は、新入部員のことを中心に、各部活に同じ内容を聞いて回っている。
 テンプレートの質問状も事前に渡してから取材に来るため、去年は新聞部に入ったばかりの俺でも比較的容易に取材が出来た。

 ……

「取材は以上です。ご協力ありがとうございました」

 3分残して、取材終了。それなりにボリュームのある回答を得られて、身のある取材となった。
「最後に、練習風景を少し撮らせてもらってよいですか?」
「うーん……まぁ、スポーツしてるわけじゃないから、いっか」

 ん? 今の鏡さんの発言はどういう意味だろうか。
 写真を撮りたいと申し出た時、取材中ずっと笑顔だった鏡さんが、一瞬嫌そうな顔をした。

「あの、今のはどういう意味……」

 確認したかったのだが、音楽室に吹奏楽部の顧問が到着。
 鏡さんを含め、部員全員に緊張が走る。

 ……どうやら、これ以上の話は無理なようだ。
 小声で鏡さんに礼を伝え、音楽室を後にした。


 次に取材に行ったのは、ダンス部。残念ながら、取材拒否。
 その次は、演劇部。ここでは、吹奏楽部同様に取材が出来た。

「あんまり、変な写真撮らない方が良いですよ」

 取材終了後に、演劇部部長の南さんが優しく諭すような感じで、俺に話しかける。
 変な写真なんて撮ったつもりは無いのだが……。

 どうやら、この取材拒否の件は、「写真」がキーワードのようだ。
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ラノベ執筆の勉強中です。ファンタジー系好き。普段は同人ゲームとか作ってるド素人ですが、よろしくお願いします。ちなみに中身はアニメとゲーム好きなシステムエンジニアです。 好きな作品:スレイヤーズ、爆れつハンター

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