高槻東高校@新聞部

  スポーツ学校である高槻東高校に存在する、数少ない非運動系の新聞部。
  取材拒否にも負けず、悪名にも挫けず、学校新聞を発行しています。
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2.新聞部@部員募集中-4

「で、本題のWEBの件なんだけどさ」
「あ、まだその話するの?」

 どうやら、千香の中では完結していたらしい。
「あぁ、やっぱり部活存続させたいし」
「それはわかるけど、WEB新聞って具体的に何をするつもりなの?」
「えっと、それは今の紙の新聞をスマホやタブレットから見れるようにして……」

 しまった。具体的な内容は考えてなかった。
「それで、どれくらいの効果が得られるの? WEB化するために必要な維持費とかはどうするの?」

 維持費? WEB新聞を作るのに、パソコン以外に必要なものがあるんだろうか。
「千香……維持費って?」

 とりあえず、おそるおそる聞いてみた。
「まず、サーバはどうするの? ドメインは? この部室にはLANとか敷いてないけど、どうするつもり?」

 凄い勢いで千香が俺に詰め寄ってくる。
 これは以前に、千香の描いてたイラストに「このキャラ何?」と不用意に聞いてしまった時の再来だろうか。
 あの時もなだめるのが大変だった。
「ちか……」
「何よ」
「いや、近いって言いたかったんだけど」

 背が低く細い身体の割に、意外と存在感のある膨らみ。
 その体温が俺に伝わるんじゃないかと思えるほどに、千香が近づいてきているのだが、興奮しているのか気づいていない。
「――きゃっ!」

 普段の彼女からは想像できないような、乙女チックな悲鳴をあげ、千香が俺から離れる。
「ごめん、とりあえず一度落ち着こうか」

 やばい。ちょっとドキドキしている。この俺が、この千香に。
 相手は千香だぞ。2次元と可愛い女子が大好きな、少し痛い少女。
 相変わらず、前髪で千香の瞳は見えないけれど、こっちを向いているのはわかる。
 今、彼女はどういう心境なんだろうか。

 ただ、残念ながら先ほどの千香の言葉は全く理解できなかった。
 わかったのは、千香が相当パソコンに詳しいということ。そして、効果うんぬんは置いといて、千香の言う維持費問題をクリアしないといけないということ。

 大きく一度深呼吸。
 よし、平常心。

「綾瀬部長。部費って余裕あるんでしたっけ?」
「んー、パソコンはおねーさんと千香ちゃんの私物だし、紙とプリンタのカートリッジ代くらいしか支出がないから、大丈夫よ」
「なるほど。維持費って、いくらくらいかかるんだろ」

 やっぱり千香に聞くしかないのか? さっきは不覚にもドキドキしてしまったが、同じ失敗はしない……と思う。
「あのね、良太。そういうことは、顧問の橋長先生に聞けば良いと思うんだけど」
「あ……そうだね」

 予想外に、千香が先に答えをくれた。
 けど、俺はまともに千香の顔が見れなかった。

2.新聞部@部員募集中-3

「WEB新聞? いやよ。めんどくさいし、ベタだし」

 放課後、早速WEB新聞の提案をしてみた結果。千香から予想通りの返事が来た。
「でも、部員獲得にも繋がるぜ」
「部員獲得って言うなら、何で今日メイド服で新聞配らなかったのよ」
「配ったよ! 配ったけど、瞬殺で風紀委員に強制終了させられたさ」
「そこは、上手くやりなさいよ」

 相変わらず、千香が無茶な要求を言ってくる。
「というわけで、綾瀬部長すみません。お借りしたメイド服はお返しします」
「そうなの? じゃあ、申し訳ないんだけど、クリーニングにだけ出してもらえるかしら」

 ――っ!

 クリーニング。
 俺があのメイド服をクリーニング屋に持って行き、店のおばさんに「何この服。いったい、何に使っているのかしら?」とか心の中で思われつつ、引きつった愛想笑いで受け付けされてこいというのか。
 そして、クリーニングが終わった後も、また違うおばさんに「あらいやだ。最近は高校生がメイド服なんて持ってるのね。まぁやらしい」何て思われつつ、受け取らなければならないのか。

「千香。一緒に行ってくれ……」

 だめだ。俺が千香と一緒にメイド服を持って行こうものなら、「まぁ、このコたちったら若いのにマニアックね」なんて、わけのわからない想像をされるかもしれない。
 そして、俺たちが店を出た後に、店員同士でニヤニヤされようものなら……俺には無理だ。耐えられない。

 いや、そもそも店員がおばさんとは限らない。
 もしも、高槻東高校の誰かがクリーニング屋でバイトしていたら、「平井良太はメイド服を着用するのが趣味」なんて濡れ衣を着せられるかもしれない。

 今なら、部員勧誘用のコスプレで通るかもしれないが、これ以上何かあると俺の高校生活が崩壊するかもしれない。
 だめだ……詰んだ。

「綾瀬部長」
「あら、なあに?」
「このメイド服、買い取らせてください」

 そうだ。もう、この服を買い取って処分しよう。それならクリーニングに出さなくても良い。

「ついに、良太が覚醒した!」
「良太君。もっと本格的な、ディティールにこだわったの紹介するわよ」

 違う……何かが違う。
「綾瀬先輩。やっぱり基本は黒ですけど、オレンジとかも良いんじゃないでしょうか?」
「水色も良いわよ。あと、カチューシャも良いけど、リボンもありね」

 ……

 どこからともなく取りだしたメイド服のカタログで、盛り上がる千香と綾瀬先輩。
 2人が俺の話を聞いてくれるまで1時間かかった。

 そして、何とか俺の発言の意図を伝え、クリーニングじゃなくても、家庭用の洗濯機で良いと了承を貰えた。
 ただ、家族に見つかったら何て言い訳すればよいのやら。


 大幅に脱線したけれど、メイド服を丁寧に畳んで鞄の奥底に隠し終わったところで、ようやく本題となるWEBの話になった。

2.新聞部@部員募集中-2

「平井良太……ちょっと、風紀委員まで来なさい」

 新聞部で部員獲得のための会議を行った翌朝。
 校門でさよちゃんが俺を一目見て、腕を引っ張り歩き出す。
 まぁ、無理もないか……もし、俺が風紀委員だったら、間違いなく今の自分に指導する。
 何故なら、今の俺の姿が金髪ツインテールにメイド服だから。


「で、あんたは何で、そんな格好で新聞配ってんのよ?」

 風紀委員室で、机を挟んでさよちゃんと対峙。今の俺は、刑事ドラマなんかで取り調べを受ける犯人みたいになっている。
「あー、昨日さよちゃんが部員の話してくれたよね」
「うん」
「あの話を千香にしたら……新聞部のインパクトが弱いって話になってさ」

 最初は、俺が新聞を手配りすると提案。それだけだとインパクトが弱いって、コスプレしろって話に。
 もちろん反対したけど、そんな普通の意見が千香に通るわけもなく。
「それで、その衣装?」
「あぁ。せめて戦場カメラマン風にって言ったんだけど、よく考えたらそんな衣装あるわけなくてさ」
「メイド服はあったんだ」
「あー、何故か綾瀬先輩が持ってた」

 俺としては、新聞部のロッカーからメイド服が出てきたことに一番驚いたんだが、一緒に金髪ツインテールのカツラを出されたことに比べれば、些細なことだった。
「まぁ、部員勧誘期間ってことで、大目に見るけどさ……ちょっと方針変えた方が良いんじゃない?」
「だよなー」

 この期間は、サッカー部やバスケ部などの運動系の部活も、ユニフォームでビラ配りをしている。
 メイド服がいくら目立っても、所詮は女装。ソフトテニス部女子のユニフォーム――スコートとサンバイザーの組合せには勝てなかった。
「そもそも、新聞部は他の部に無い、有利な点がいっぱいあるじゃない」
「……部長と副部長の変態っぷり?」
「それは何か有利に働くものなのかしら」

 ちょっとした冗談のつもりだったけど、さよちゃんの目が冷たい。
「ごめん、冗談です。うちの部に何か有利な点ってあったっけ?」
「いっぱいあるわよ。まず、学校内で新聞を発行していること」
「まぁ、新聞部だからね」

 新聞部が新聞を作らなければ、何部なのか本当にわからない。
「新聞って、紙だけじゃないでしょ」
「んー、校内放送とかってこと?」
「それじゃ放送部じゃない」

 まぁ、うちの学校に放送部なんて無いので、競合することはないけど、ちょっと違う気がする。
「せっかくうちの学校で唯一パソコンが使える部なんだから、WEB新聞とかやってみたら?」
「WEBかぁ……俺パソコンとか全然わからないしなー」

 原稿執筆のために綾瀬先輩が。イラストを描いたりするのに千香が、それぞれ部活でパソコンを使っている。
 校正用にも1台パソコンが割り当てられているけど、そもそも機械が苦手な俺。なので、原稿をプリントアウトして、紙で誤字脱字チェックをしていたりする。
「そこは誰かに協力してもらえばいいじゃない。少なくとも、そのメイド姿よりかは良いと思うけど」

 メイド服については、同感。もう2度と着たくない。
 ただ、うちの学校はパソコン部なんて無いし、パソコンに詳しい人なんて居るんだろうか。

「まぁ、WEBってのは一例よ。とりあえず、方針は変えてよね」
「うーん、わかった」

 WEB新聞……ベタだけど、有効であるからこそベタに成るわけで。
 とりあえず、メイド服を脱ぎ、放課後にWEB新聞の相談をしてみることにした。

2.新聞部@部員募集中

「それでは、第1回新聞部緊急議会を開きます。
 司会進行は私、平井良太が務めさせていただきます」

 風紀委員室を出て、新聞部部室のドアを開けた瞬間に言い放ってやった。
 綾瀬部長と千香。この濃い2人から俺が主導権を得るには、不意打ちくらい必要だ。
「良太、いきなりどうしたの?」

 千香が目を丸くしているが、作戦通り。強引に話を続ける。
「議題その1。新入部員が入らないと、新聞部が廃部になります!」
「良太が頑張れば良いじゃない」

 千香が「だから何?」とでも言いたげな顔で俺を見てくる。
「その頑張りを無駄にしているのは、どこのどいつだっけ?」
「ふっ。過去のことは忘れたわ」

 いや、まだ1時間も経ってないから。
「この際、ツインテールじゃなくても、女子じゃなくても良いじゃないか。とりあえず、新入部員捕まえないと」
「えー、じゃあ良太がツインテールにしてよ」

 俺をツインテールにして、こいつは何がしたいんだろうか。
「綾瀬部長ー。何とか言ってやってくださいよー」

 不意打ちのアドバンテージが早くも無くなってしまったので、困った時の綾瀬部長頼み。
「そうね。良太君はツインテールよりも、ボブカットが良いんじゃないかしら」
「髪型の話じゃないです」

 頼ってみたものの、やっぱりダメだった。しかも、何で2人とも当然のように女装を指定するんだよ。
「冗談よ。こうなったら、おねーさんが可愛い美少年を勧誘してくるわ」
「やる気を出して頂いたところ申し訳ないんですが……」
「なぁに?」
「議題その2として、今週号の原稿が書き直しになりました」

 どっちかというと、こっちの議題の方が緊急だった。話す順番を間違えたかもしれない。
「それは、おねーさん悲しいわね。コラムなんか特に頑張ったのに」
「いや、そのコラムが原因なんですけど」

 綾瀬部長がちょっといじけてる。
「とりあえず、綾瀬部長は原稿書き直してください。
 で、俺と千香は部員勧誘の対策を考えます」

「えー! 私もやるのー?」
「やれよー!」

 こうして、新聞部の部員獲得作戦が始まった。

1.新聞部@活動中-4

「さよちゃん! 3人以上部員が居ないと、廃部ってマジなのか?!」

 さよちゃんに言われた、部活の存続ルール。思わず聞き返さずにはいられなかった。
「だから、本当だって」
「何とかならない?」
「ならない」
「そこを何とか」
「私に言ってもしょうがないでしょ」

 そりゃそーだ。
「だいたい、あんな狭い部屋で……なんて許さないんだから」

 珍しく、さよちゃんが小声で話す。
「え? ごめん、何? 声が小さくてよく聞き取れなかった」
「何でもないわよ!」

 そんなに、顔を真っ赤にして怒らなくても。一体、何を許さないんだろうか。

「部員の話、教えてくれてありがとう」
「別にそんなことでお礼言わなくてもいいわよ。勧誘活動頑張ってね」
「あぁ。とりあえず、ツインテールが似合いそうなコを探してくるよ」
「……何でツインテールなの?」

 思わず口から出てしまった言葉に、さよちゃんが引いている。
「違う! 違うぞ! 別に俺がツインテールが好きとかじゃなくてだな」
「そう、そういうのが好きだったんだ」

 うわ……凄く困った顔されてる。
「違う、千香だよ千香」
「えっ! あんた千香ちゃんが好きだったの?!」

 駄目だ。俺も動揺しているのか、ちゃんと伝わらない。
「これは……大変な事態だわ」

 さよちゃんの顔が、どんどん暗くなっていく。
「だーかーら、ツインテールは俺じゃなくて、千香の趣味なんだって」
「……あー、なるほど。千香ちゃんがツインテール好きなのね」

 やっと伝わった。
「あはは、いやーびっくりしたわ。あはははは」
「ちゃんと伝わって良かったよ……」

 さよちゃんが変に勘違いして、風紀委員からの風当たりがこれ以上キツくなるのは困る。
「じゃあ、いったん戻るよ」
「うん。じゃあね」

 良かった。さよちゃんが笑顔になっていた。
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