「あら、高木さん。何か御用かしら?」
「綾瀬先輩……何やってるんですか」
「見ての通り、ヘタレな男子高校生へのお勉強よ」

 気づけば、いつの間にか綾瀬先輩が俺のすぐそばまで来ている。
「ちょっ……ヘタレな男子高校生って俺のことですか」
「あはは、良太以外この部屋に男子居ないし」

 千香が即答する。
「ほほう、じゃあヘタレじゃないことを証明してやろうか」

「こほん。あー、ここに風紀委員が居ること忘れてないでしょうね」

 あ……忘れてた。
 同じく2年生の高木小夜子。通称さよちゃん。身長145センチで幼児体型のベビーフェイス。到底、女子高生に見えないその容姿のせいで、風紀委員なのになめられまくっている可哀想な少女。
 そして何が一番可哀想かと言うと、風紀委員の中でこの新聞部を担当させられていること。
「ごめん、さよちゃん。用件は何だっけ?」
「用件は、今週号の原稿チェックするから風紀委員に来なさいってこと。
 それと、平井良太! 学校内でいかがわしいことしたら、即刻停学だからね!」

 いかがわしいことって……。

「じゃあ、あとで来なさいよ」

 さよちゃんが帰ろうとする。
「待って!」

 千香がさよちゃんに駆け寄る。
「何よ」
「もっふもっふさせてー!」
「あんたは、いつも、それしかないのかー!」

 千香がさよちゃんの髪の毛に飛びつき、すーはーすーはーする。
 もふもふじゃなかったのかよ。
「やめてー」
「待って、あと30秒ー」

 逃げ出すさよちゃんを千香が追いかけ、そのまま2人はどこかへ消えていった。
「さて、邪魔者も居なくなったし、さっきの続きをしましょうか」
「しませんて」
「えー、やっぱりヘタレなのー?」

 この人はどこまで本気なんだろうか。
「そんなことより、さよちゃんも言ってましたけど、今週号の原稿チェック行かないと」
「けちー」
「いや、ここでケチって言われる意味がわからないです」

 うちの新聞部は、3人しか居ないものの、何とか毎週学校新聞を発行している。
 去年までは風紀委員のチェックなんて無くて、自由に発行していたんだけど、代替わりで綾瀬先輩が部長になってからというもの、新聞記事の内容がちょっと……いや、かなり過激なものになり、生徒会に目をつけられてしまった。
 そこで、風紀委員による毎週の原稿チェック。
 事前に風紀委員の許可が下りた新聞しか発行できなくなってしまった。

 そして、そのチェックをしているのが、先ほどのさよちゃん。
 風紀委員でチェックすることが生徒会で決められたらしいけど、風紀委員長にやる気がないため、さよちゃんに押し付けられている。

「じゃあ、風紀委員のところへ行ってきますねー」
「はーい。高木さんによろしくねー」

 まぁ、うちも似たようなもので、綾瀬先輩は風紀委員には絶対行かないし、千香はさよちゃんが嫌がるので毎回俺が風紀委員に出向いている。
 早く新入部員見つけないとな……。