「ちょっと、何よこれ! 平井良太! よくこんな原稿持ってこれたわね!」

 なんだ? よくわからんが、さよちゃんが怒っている。風紀委員の部屋には2人しか居ないんだから、そんなに大きな声を出さなくても聞こえるのだが。

「今週号の原稿ちゃんと読んだの?」
「いや、今回は部員勧誘に狩り出されてたから、実はまだ読んでない」

 うちの新聞の作り方は、まずみんなでテーマを決める。で、テーマについて取材とか情報集め。そして、その情報を元に綾瀬部長がメインで記事を書き、千香がイラストを描いたりレイアウトを決めたりする。
 俺は文章を書くことも、絵を描くことも出来ないので、主に写真係と校正係。といっても、誤字脱字チェックくらいしかできないけど。そして、その校正も今回は綾瀬部長がやっている。

「そう。じゃあ今ここで、このコラム読んでみなさいな」
「どれどれ」

……

 内容は、綾瀬先輩が先週の日曜日に取材した、子供向けの体操教室の練習風景。俺も写真係として一緒に行って、バク転する小学生に関心したんだっけ。

 ただ、その着目点が人と違うというか、どこ見てんだよ……というか、とにかく残念な内容なわけで。
「あー……なんだ、将来の体操選手に期待するが故に、細かく描写し過ぎたわけで」
「ふーん、それから?」
「体操少年の未発達な筋肉について、スポーツ学的観点から意見したと言いますか……」
「へー、スポーツ学ねぇ。他に弁明はあるの?」

 さよちゃんが、じっと俺の目を見つめる。
 やめて、お願い。これ以上、その純真な目で俺を見ないで。
「……すみません。言い訳できません」
「じゃあ、書き直しね。こんな綾瀬先輩の趣味が満載の新聞は、学校新聞として認められません」

 誰が書いたかなんて言ってないのに、断言されてしまった。まぁ、正解なんだけどさ。
「うひゃー、今日は帰り遅くなるなー」
「でも、下校時刻は守ってもらいますからねー」
「はいはい」

 もう今日は部員勧誘どころではなくなってしまった。流石に部員勧誘よりも、新聞部としての活動を優先しないとまずいだろう。
「でも、新聞部も大変ねー」
「んー、何がー?」
「新入部員入らないと、廃部になっちゃうじゃない」
「……はい?」

 さよちゃんから出た、突然の言葉を理解しきれなかった。
「えっ? 新聞部潰れるってどういうこと?」
「あー、別に今すぐってわけじゃないわよ。とりあえず、秋までは大丈夫じゃない?」
「秋……って、3年生の引退か?」

 スポーツ学校とはいえ、一応大学受験や就職活動もあるので、3年生は基本的に部活を引退という形になる。
 と言っても運動部の人たちはスポーツ推薦なんかが決まっていて、卒業までずっと部活に出る人も結構居るらしい。
「そうそう。だって、流石に新聞部じゃスポーツ推薦はないでしょ」
「そりゃまぁ確かにそうだけどさ」
「となると、綾瀬先輩が抜けるじゃない」
「でも、俺と千香が居るだろ」

 全く思ってなかったけど、俺と千香で2人きりの部活……いろんな意味で恐ろしい。想像するのはやめておこう。
「だから、2人しか居ないじゃない」
「それがどーした?」
「……知らないの? 3人以上居ないと部活として認められないわよ」

「なんですとー?!」