「さよちゃん! 3人以上部員が居ないと、廃部ってマジなのか?!」

 さよちゃんに言われた、部活の存続ルール。思わず聞き返さずにはいられなかった。
「だから、本当だって」
「何とかならない?」
「ならない」
「そこを何とか」
「私に言ってもしょうがないでしょ」

 そりゃそーだ。
「だいたい、あんな狭い部屋で……なんて許さないんだから」

 珍しく、さよちゃんが小声で話す。
「え? ごめん、何? 声が小さくてよく聞き取れなかった」
「何でもないわよ!」

 そんなに、顔を真っ赤にして怒らなくても。一体、何を許さないんだろうか。

「部員の話、教えてくれてありがとう」
「別にそんなことでお礼言わなくてもいいわよ。勧誘活動頑張ってね」
「あぁ。とりあえず、ツインテールが似合いそうなコを探してくるよ」
「……何でツインテールなの?」

 思わず口から出てしまった言葉に、さよちゃんが引いている。
「違う! 違うぞ! 別に俺がツインテールが好きとかじゃなくてだな」
「そう、そういうのが好きだったんだ」

 うわ……凄く困った顔されてる。
「違う、千香だよ千香」
「えっ! あんた千香ちゃんが好きだったの?!」

 駄目だ。俺も動揺しているのか、ちゃんと伝わらない。
「これは……大変な事態だわ」

 さよちゃんの顔が、どんどん暗くなっていく。
「だーかーら、ツインテールは俺じゃなくて、千香の趣味なんだって」
「……あー、なるほど。千香ちゃんがツインテール好きなのね」

 やっと伝わった。
「あはは、いやーびっくりしたわ。あはははは」
「ちゃんと伝わって良かったよ……」

 さよちゃんが変に勘違いして、風紀委員からの風当たりがこれ以上キツくなるのは困る。
「じゃあ、いったん戻るよ」
「うん。じゃあね」

 良かった。さよちゃんが笑顔になっていた。