「ちょっと、平井良太! こっちへ来なさい!」

 デジャヴだろうか。つい最近、さよちゃんから同じようなセリフを聞いた気がする。
 嫌な予感しかしないが、大人しく従う。

 前回と少し違うのは、風紀委員室ではなく、その辺の空き教室に入ったこと。
 放課後ということもあり、誰も居ない。

「で、これは何かしら」

 さよちゃんの手にあるのは、淡いピンク色のスマートフォン。風紀委員らしく、デコったりはしていない。
「うん、1つ前の型のスマホだよね。さよちゃんはピンクが好きなんだね」
「そんなつまらない台詞は要らないわ。このWEB新聞について聞いているの」

 スマホに映し出されているのは、どうやらうちの新聞部のWEB新聞らしい。
 大きく「高槻東高校新聞」と見出しが出ている。

 昨日、千香の筋肉描写モデルを断った後、綾瀬先輩も戻って来ないので、17時に解散となった。
 そして、現在16時。新聞部員である俺すら知らない間に、WEB新聞が出来上がっていた。

「ごめん、とりあえずそのWEB新聞のURL教えて。こっちのタブレット端末で見てみるよ」

 新聞部の特権、タブレット端末。
 うちの学校は携帯電話は許可されているが、タブレット端末の持ち込みは原則禁止されている。
 しかし、新聞部は部活動に必要ということで、タブレット端末やデジカメなんかの持ち込みが許可されている。もちろん、放課後までは使用禁止だが。

 さよちゃんにURLを教えて貰い、端末に打ち込む。

 ……

 内容はかなり酷かった。
 記事もイラストも千香が書いたのだろうか。美少年と……いや、もういい。

 今まで風紀委員のチェックで抑圧されていたからなのか、去年の暗黒時代の比ではない。
 何時にこの新聞が公開されたのかはわからないが、今すぐ公開を中止させないと。
「ごめん、さよちゃん。まさかこんなことになるなんて」
「いいから、早くこれ消してきて! 新聞部本当に潰れちゃうよ?」

 確かに、こんな新聞を公開するような部に新入部員が来てくれるとは思えない。
 さよちゃんに礼を言って、部室へ走り出す。

 だけど、ここで1つ疑問が浮かぶ。何故、さよちゃんは俺も知らないWEB新聞のURLを知っていたんだろうか。

 一瞬疑問が浮かんだけれど、目的地である部室に到着。

「千香ぁー!」

 叫びながら、勢いに任せ部室に飛び込む。

「あらあら良太君、青春ごっこ? 千香ちゃん、今日はお休みよ」

 綾瀬先輩から、最悪の回答が返ってきてしまった。