さよちゃんから風紀委員の情報を聞き出すため、どう切り出したものかと考えたものの、よく考えたら相手はさよちゃん。
 いつも通りの俺で良いじゃないか……というわけで、自然体で突撃することにした。

 さよちゃんが生徒会室から出てきたのは確認済み。
 彼女が居る校舎側へダッシュで戻る。
 そして、あえて風紀委員であるさよちゃんを、後ろから走り過ぎる。
「こらー! そこの男子! 廊下は走らないの」

 ついさっき聞いた台詞とほぼ同じ言葉が、俺に向かってかけられる。
「はーい……って、さよちゃんか」

 振り向き様に、さよちゃんに気付いたフリをする。
「ちょっと、平井良太! 廊下は走っちゃダメなの知ってるでしょ!」
「ごめんごめん。ちょっと、急いでたんだ」

 さよちゃんを見ると、さっき生徒会室でコピーしたであろう、大量の資料を持っていた。
 これはチャンス!
「ところで、その荷物大変そうだな。半分持つよ」
「えっ……何なの? その行動。あんたいつからそんなキャラになったのよ」

 アレ? 流石にあからさま過ぎたのだろうか? ごく自然に振る舞ったつもりだったのだが、さよちゃんのリアクションが予想と違った。
「いやいや、俺は昔から困っている女性は放っておけない人間だぜ。特に可愛いコが困っていたら、助けるに決まってるじゃないか」

 しまった。取り繕うのに必死で、自分でも訳のわからない言葉が出てしまった。
 多分、16年生きてきた中で、今までこんな発言は1度もしたことがないと思う。
「……じゃない」
「えっ? ごめん。聞き取れなかったから、もう1度言ってくれる?」
「何でもないったら!」

 前にもこんなやりとりがあった気がする。前も、さよちゃんが小声で何か言って、聞き返したら顔を真っ赤にして怒られた。
 今回は、前回よりも怒っているのだろうか。さよちゃんが耳まで真っ赤になっている。
「それより、あんた急いでるんじゃないの? こんなところで油売ってて、いいの?」
「へっ? あ、そう、そうだね。じゃ、じゃあ悪いけど、先に行くよ」
「うん。走らないようにね」

 返事替わりに手を振り、そのまま真っ直ぐ歩く。
 ダメだ、どうやら俺は根本的にこういう行動に向いていないらしい。
 途中からめちゃくちゃになって、急いでいる設定も忘れていた。

 とりあえず、新聞部に関連するかはわからないが、『風紀を乱す要因調査結果』――さよちゃんの持っていた資料のタイトルは見えた。
 一先ず、風紀委員会室横の空き教室に潜み、風紀委員の様子を探る。


 暫くすると、一際大きな声が聞こえてきた。今までの様子から、おそらくこの声が風紀委員の委員長だろう。
「あ、鈴木ー。例の新聞部の写真の件。今まで風邪で女子ソフトテニス部の部長が休んでたから、今日にでも連絡しといてくれ。悪用されるってことを、ちゃんと強調しとくんだぞ」
「わかりましたー」

 ……なんだ? 今のやりとりは。これって、もう完全に黒じゃないか。
 どうする。どうすればいいんだ?

「ただいま戻りましたー」

 重い荷物を持って遅い足取りとなったさよちゃんが、ようやく帰ってきたようだが、俺はもうどうでもよかった。