「おねーさん、帰ってきたわ」
「えっと……綾瀬部長。何をどうしたら、そんな結果になるんですか?」

 風紀委員に無茶な3本勝負を持ちかけに行った綾瀬先輩。
 意外に早く部室へ帰ってきた。

 何故か、さよちゃんを連れて。

「ふふふ、私の提案した3本勝負。風紀委員長に直談判してきたわ」
「おぉー。流石、綾瀬先輩ですね」

 千香は尊敬のまなざしで見ているが、あの内容が通るとは思えない。
「で、その風紀委員長は何て言ったんですか?」
「風紀委員長は、こう言ったわ。『高木君、任せた』と」

 投げたー! 風紀委員長めんどくさがって、さよちゃんに全部投げたー!

 まぁ、元々生徒会から新聞部の原稿チェックの話があった時も、さよちゃんに全部投げたらしいし。
 どこも組織のトップとは、そんなものなんだろうか。
「で、私がここに来ることになったのよ」
「かなり嫌そうだな」
「えっ?! 別にいつも通りだけど……」

 いつも通りと言えば、いつも通りのさよちゃんだが、つまりそれは俺が気付いていなかっただけで、今までも新聞部に来るのはかなり嫌なことだったということか。
「綾瀬部長、どうします? さよちゃんが来たところで何も解決はしないと思いますが」
「待って。そもそも、何で綾瀬先輩はうちに……風紀委員に勝負なんて持ちかけてきたの?」

 話……伝わっていないのだろうか。
「あらあら、高木さん。さっきも風紀委員長に言ったじゃない。王道バトルは5本勝負って」
「いや、その意味もよくわからないんですが、それは置いといて。そもそもの勝負の目的は何なんですか?」

 一体、綾瀬先輩は風紀委員で何を話したんだろうか。
「風紀委員に謝罪してもらうためよ」
「千香ちゃん。風紀委員が新聞部に謝らないといけないことって何かしら?」

 ――カチン

 謝らないといけないことが何か……だと? 風紀委員が新聞部に対して行ってきたことを、一番よく知っているのがお前じゃないのか?
 今まで最前線で新聞部に接してきたのは、お前だろ?
「ふざけるなっ!」

 思わず叫んでしまった。言葉を発して自分でも気付いたが、怒りで声が震えている。
 そして、ただただ自分の怒りを目の前にいる少女にぶつけてしまいたい欲求に駆られる。

 ぶつける先はこの少女なのか? 風紀委員という組織じゃないのか?
 だけど、その風紀委員という組織の代表として、彼女はここに居る。なら、ぶつけてもいいんじゃないのか?
 ましてや、俺を掌の上で転がすように動かしてきた、まさにこいつは実行犯……。
「何? いきなりどうしたの?」

 困惑した表情を作り、こいつは俺を見定めてくる。

 そう、きっと全てこいつが悪いんだ。こいつが俺を、新聞部をおかしくしたんだ。