「なぁ、さよちゃん……いや、高木さん。今まで楽しかったよね? 滑稽な俺を見て」
「えっ?!」

 高木さんが目を丸くし、驚いた表情を作る。
「バカにしてたんだろ? 俺を、そして新聞部を。私の助言を信じ込んでバカなことやってるって」
「な、何を言っているの?」

 自分のたくらみが、ついにバレたためか、血の気が引いたような顔になっている。
「悪かったな、毎週原稿チェックさせて。だが、これからも俺たちは活動するぜ。風紀委員長に直接原稿持って行って」
「……」

 嫌な言葉がどんどん口からでる。何を考えているわけでもない。何か狙いがあるわけでもない。ただ、今の自分の心にあるものを吐き出しているだけだ。
 多分、これはただの八つ当たり。だけど、止まらない。止められない。
 言葉を発すれば発する程、また俺の心に黒い靄がかかる。吐き出しても、吐き出しても靄は晴れない。

 頭の中で、『違う』と叫ぶ俺が居る。泣きそうな彼女の顔を見て、『もう止めろ』と叫ぶ俺が居る。
 だけど、俺の心の堤防は既に決壊している。今まで心の奥底にあった、小さな小さな疑念が黒い悪意に変わって、どんどんこみ上げてくる。

 ――バタンッ

 俺の黒い言葉が言い尽くされる前に、彼女は部室を出て行った。


「良太、らしくないんじゃない」
「……」

 らしくない……暴走する千香や綾瀬先輩を止め、風紀委員にいいように踊らされるのが、俺らしいのだろうか。

 そうだ。よく考えたら、提案したのは高木さんだが、実行に移したのは千香や綾瀬先輩だ。
 ここにも敵が居たんじゃないか。
 何だ、結局俺1人か。

 やっぱり俺にチームプレイなんて無理だったんだ。
 いや、あの時と一緒で、チームなんて必要なかったんだ。

 もう、無理矢理頑張らなくてもいいや。
 あの時の俺の考えのままが正しいんだ。

「帰ります」

 言って、教室を出た。
「ちょっと、良太! どこに……」

 後ろから千香の声が響いたが、振り返りすらせずに、俺はそのまま帰路についた。