「と、ところでさ。新聞部が悪評流されてるって、怒ったんだよね?」
「あ、あぁ」

 さよちゃんのお母さんが作りだした気まずい空気を嫌ってか、かなり強引な話題転換がきた。
「で、それを風紀委員が率先してやっていると思っているわけね」
「……まぁ、事実だしな」

 せっかく和解したばかりだが、そもそもの発端となる話のため、ここはどうしても譲れない。
 だが、二の舞になるわけにはいかないので、極力冷静に。言葉を選んで話す。
「それなんだけどさ、大元は風紀委員じゃないと思うわ」
「どういうことだ?」

 思わずさよちゃんに詰めよってしまう。
 さよちゃんが顔をそむけながら、話を続ける。
「うちの委員長って、面倒臭いこと嫌いだから、自分から率先してそういうことをする人じゃないの」
「んー、そう言えばそんな噂は、どこかで聞いた気がする」

 確か、去年新聞部がいろいろ問題になった時、生徒会が風紀委員に指導するように言って、風紀委員長がさよちゃんに丸投げしたとかなんとか。
「で、うちの委員長が何か風紀委員のメンバーに指示してるってことは、教師か生徒会のどちらかから、よっぽど強く言われていると思うの」
「ふむ」
「で、うちの学校の風土から言うと、生徒の自主性を重んじるから、教師が風紀委員に何か指示するのってかなり少ないのよ」

 ということは、今回の黒幕は風紀委員に指示を出している生徒会か。
「だからね。表立って動いているように見えるのは風紀委員かもしれないけど、うちに何かしても解決しないと思うのよ。
 私は具体的に誰から風紀委員に指示が出ているかは知らないけど、ちょっと調査するところを変えた方が良いんじゃないかな」
「わかった。さよちゃん、いつも本当にありがとう」

 やるべきことが定まり、急にやる気が復活してきた。
「俺、学校行ってくる」
「えぇ、わかったわ」
「さよちゃんも、明日から学校来る?」

 小さく頷くさよちゃん。
「今日は急に押しかけてきて、ごめんな」
「いいわよ」

 部屋を出ると、すぐ傍でお母さんが立っていた。
 ……やっぱり、聞き耳立ててたよ。
「すみません、御暇させていただきます」
「あら、もういいの? 何ならおばさん1時間くらい買い物に行って来るけど」

 どういう意味だろうか。……いや、つっこまないでおこう。
「いえ、ちょっと用事が出来たので」
「あら、それは残念」

 急いで靴を履く。久々に気力が充実している感じがする。
「お邪魔しました」
「また来てねー」

 さよちゃんのお母さんに見送られつつ、エレベーターに。
 学校まで急いで戻った。