高槻東高校@新聞部

  スポーツ学校である高槻東高校に存在する、数少ない非運動系の新聞部。
  取材拒否にも負けず、悪名にも挫けず、学校新聞を発行しています。
  ライトなラノベコンテスト応募作品 カテゴリの「本文」からどうぞ

本文

1.新聞部@活動中

「ちょっと何するのよ!」
「久美ー。だから新聞部の見学なんてやめようって言ったのに。もう帰ろ!」

 放課後の教室を回り、ようやく見つけた暇そうな新入生2人。何とか部活見学へ連れてきて、副部長の千香に活動方針を説明してもらっていた。
 が、話途中で2人とも逃げるように部室を出ていった。

「どーしたの?! 待って、待ってくれって……」

 慌てて追いかけたけど、既に2人は遠くまで走り去っていた。

「おーい、千香ー。何やらかしたんだー?」

 千香が説明中、俺は新入生へ見せるための新聞を用意していたから、何が起こったか見ていなかった。

「いやー、あのね。大したことじゃないんですよ? ちょーっと、ショートカットの娘がロリロリで可愛かったからさー」
「可愛かったから、何?」 
「いやー、思わず抱きついちゃったんだよねー」
「抱きついちゃったんだよねー……じゃねぇよ」

 まったく、こいつは……。 
 女子生徒を連れてくれば抱きつき、男子生徒を連れてくるとやる気を無くす。副部長のくせに、今の部活の状況がわかっているのだろうか。
「綾瀬部長ー。こいつ、何とかしてくださいよー」
「あら、いいじゃない。自分の欲望に素直なことは良いことよ」
「いや、そんなことに素直になられても」

 部長の綾瀬先輩。新聞部唯一の3年生。
 この人しか3年生が居ないので、俺と同じ2年生の近藤千香が副部長をやっていたりする。
「良太も抱きついてみたらいいんだよー! ふっわふわでとっても柔らかいよー!」
「その一瞬の『ふっわふわ』を体験するために、高校生活を捨てる気にはなれねぇよ」

 千香が嬉しそうに、両腕で自分を抱きしめるようなジェスチャーをする。
 彼女は普段から前髪で両目が隠れているため、どこを見ているかはわからないけれど、ニヤニヤしているのはわかる。
 そして、男の俺が千香と同じことをすると、間違いなく変態扱いされて残りの高校生活を日陰で過ごすことになる。
 いや、下手すれば一発退学で高校生活強制終了かもしれない。

「そうそう、さっきのもう1人のコも良かったんだよ?」
「聞いてねぇよ」
「ねぇ、良太。次はツインテールが似合いそうなコ連れてきてよ!」
「お前、この新聞部に新入生を連れてくることが、どれだけハードル高いか分かってんのか?!」

 残念ながら、スポーツ学校である我が高槻東高校で、非運動系の部活は立場が弱い。
 新入生の大半が中学時代に何らかのスポーツを経験していて、入学前から入る部活を決めている者が多いからだ。

「ツインテールの美少女も良いけど、私は可愛い美少年でも良いわよ」
「えー、でも綾瀬部長。男は狼って言いますよー」

 お前が言うか。
「それは、人によるわねー。良太君なんか、同じ部屋に女子高生が2人も居るのに、何も出来ないじゃない」
「それもそーですね」

 何も出来ないんじゃなくて、何もする気が起きないと言うか……。
 いや、これは口に出さないでおこう。
「ほらほら、良太君。おねーさんがいろいろ教えてあげるわよ」

 綾瀬先輩がセーラー服のスカーフを外しながら近寄ってくる。
「先輩……冗談ですよね?」
「あら、冗談だと思う?」

 1つしか年齢が違わないのが、不思議なくらい妖艶な魅力を持つ綾瀬先輩。
 きっと、あの趣味がなければ凄くモテると思うんだけど……。
「邪魔するわよ」

 突如、開けっ放しのドアから女子の声。

……

「ちょっと! 教室で何してるの!」

 最悪のタイミングで、最悪の人物が訪れていた。

1.新聞部@活動中-2

「あら、高木さん。何か御用かしら?」
「綾瀬先輩……何やってるんですか」
「見ての通り、ヘタレな男子高校生へのお勉強よ」

 気づけば、いつの間にか綾瀬先輩が俺のすぐそばまで来ている。
「ちょっ……ヘタレな男子高校生って俺のことですか」
「あはは、良太以外この部屋に男子居ないし」

 千香が即答する。
「ほほう、じゃあヘタレじゃないことを証明してやろうか」

「こほん。あー、ここに風紀委員が居ること忘れてないでしょうね」

 あ……忘れてた。
 同じく2年生の高木小夜子。通称さよちゃん。身長145センチで幼児体型のベビーフェイス。到底、女子高生に見えないその容姿のせいで、風紀委員なのになめられまくっている可哀想な少女。
 そして何が一番可哀想かと言うと、風紀委員の中でこの新聞部を担当させられていること。
「ごめん、さよちゃん。用件は何だっけ?」
「用件は、今週号の原稿チェックするから風紀委員に来なさいってこと。
 それと、平井良太! 学校内でいかがわしいことしたら、即刻停学だからね!」

 いかがわしいことって……。

「じゃあ、あとで来なさいよ」

 さよちゃんが帰ろうとする。
「待って!」

 千香がさよちゃんに駆け寄る。
「何よ」
「もっふもっふさせてー!」
「あんたは、いつも、それしかないのかー!」

 千香がさよちゃんの髪の毛に飛びつき、すーはーすーはーする。
 もふもふじゃなかったのかよ。
「やめてー」
「待って、あと30秒ー」

 逃げ出すさよちゃんを千香が追いかけ、そのまま2人はどこかへ消えていった。
「さて、邪魔者も居なくなったし、さっきの続きをしましょうか」
「しませんて」
「えー、やっぱりヘタレなのー?」

 この人はどこまで本気なんだろうか。
「そんなことより、さよちゃんも言ってましたけど、今週号の原稿チェック行かないと」
「けちー」
「いや、ここでケチって言われる意味がわからないです」

 うちの新聞部は、3人しか居ないものの、何とか毎週学校新聞を発行している。
 去年までは風紀委員のチェックなんて無くて、自由に発行していたんだけど、代替わりで綾瀬先輩が部長になってからというもの、新聞記事の内容がちょっと……いや、かなり過激なものになり、生徒会に目をつけられてしまった。
 そこで、風紀委員による毎週の原稿チェック。
 事前に風紀委員の許可が下りた新聞しか発行できなくなってしまった。

 そして、そのチェックをしているのが、先ほどのさよちゃん。
 風紀委員でチェックすることが生徒会で決められたらしいけど、風紀委員長にやる気がないため、さよちゃんに押し付けられている。

「じゃあ、風紀委員のところへ行ってきますねー」
「はーい。高木さんによろしくねー」

 まぁ、うちも似たようなもので、綾瀬先輩は風紀委員には絶対行かないし、千香はさよちゃんが嫌がるので毎回俺が風紀委員に出向いている。
 早く新入部員見つけないとな……。

1.新聞部@活動中-3

「ちょっと、何よこれ! 平井良太! よくこんな原稿持ってこれたわね!」

 なんだ? よくわからんが、さよちゃんが怒っている。風紀委員の部屋には2人しか居ないんだから、そんなに大きな声を出さなくても聞こえるのだが。

「今週号の原稿ちゃんと読んだの?」
「いや、今回は部員勧誘に狩り出されてたから、実はまだ読んでない」

 うちの新聞の作り方は、まずみんなでテーマを決める。で、テーマについて取材とか情報集め。そして、その情報を元に綾瀬部長がメインで記事を書き、千香がイラストを描いたりレイアウトを決めたりする。
 俺は文章を書くことも、絵を描くことも出来ないので、主に写真係と校正係。といっても、誤字脱字チェックくらいしかできないけど。そして、その校正も今回は綾瀬部長がやっている。

「そう。じゃあ今ここで、このコラム読んでみなさいな」
「どれどれ」

……

 内容は、綾瀬先輩が先週の日曜日に取材した、子供向けの体操教室の練習風景。俺も写真係として一緒に行って、バク転する小学生に関心したんだっけ。

 ただ、その着目点が人と違うというか、どこ見てんだよ……というか、とにかく残念な内容なわけで。
「あー……なんだ、将来の体操選手に期待するが故に、細かく描写し過ぎたわけで」
「ふーん、それから?」
「体操少年の未発達な筋肉について、スポーツ学的観点から意見したと言いますか……」
「へー、スポーツ学ねぇ。他に弁明はあるの?」

 さよちゃんが、じっと俺の目を見つめる。
 やめて、お願い。これ以上、その純真な目で俺を見ないで。
「……すみません。言い訳できません」
「じゃあ、書き直しね。こんな綾瀬先輩の趣味が満載の新聞は、学校新聞として認められません」

 誰が書いたかなんて言ってないのに、断言されてしまった。まぁ、正解なんだけどさ。
「うひゃー、今日は帰り遅くなるなー」
「でも、下校時刻は守ってもらいますからねー」
「はいはい」

 もう今日は部員勧誘どころではなくなってしまった。流石に部員勧誘よりも、新聞部としての活動を優先しないとまずいだろう。
「でも、新聞部も大変ねー」
「んー、何がー?」
「新入部員入らないと、廃部になっちゃうじゃない」
「……はい?」

 さよちゃんから出た、突然の言葉を理解しきれなかった。
「えっ? 新聞部潰れるってどういうこと?」
「あー、別に今すぐってわけじゃないわよ。とりあえず、秋までは大丈夫じゃない?」
「秋……って、3年生の引退か?」

 スポーツ学校とはいえ、一応大学受験や就職活動もあるので、3年生は基本的に部活を引退という形になる。
 と言っても運動部の人たちはスポーツ推薦なんかが決まっていて、卒業までずっと部活に出る人も結構居るらしい。
「そうそう。だって、流石に新聞部じゃスポーツ推薦はないでしょ」
「そりゃまぁ確かにそうだけどさ」
「となると、綾瀬先輩が抜けるじゃない」
「でも、俺と千香が居るだろ」

 全く思ってなかったけど、俺と千香で2人きりの部活……いろんな意味で恐ろしい。想像するのはやめておこう。
「だから、2人しか居ないじゃない」
「それがどーした?」
「……知らないの? 3人以上居ないと部活として認められないわよ」

「なんですとー?!」

1.新聞部@活動中-4

「さよちゃん! 3人以上部員が居ないと、廃部ってマジなのか?!」

 さよちゃんに言われた、部活の存続ルール。思わず聞き返さずにはいられなかった。
「だから、本当だって」
「何とかならない?」
「ならない」
「そこを何とか」
「私に言ってもしょうがないでしょ」

 そりゃそーだ。
「だいたい、あんな狭い部屋で……なんて許さないんだから」

 珍しく、さよちゃんが小声で話す。
「え? ごめん、何? 声が小さくてよく聞き取れなかった」
「何でもないわよ!」

 そんなに、顔を真っ赤にして怒らなくても。一体、何を許さないんだろうか。

「部員の話、教えてくれてありがとう」
「別にそんなことでお礼言わなくてもいいわよ。勧誘活動頑張ってね」
「あぁ。とりあえず、ツインテールが似合いそうなコを探してくるよ」
「……何でツインテールなの?」

 思わず口から出てしまった言葉に、さよちゃんが引いている。
「違う! 違うぞ! 別に俺がツインテールが好きとかじゃなくてだな」
「そう、そういうのが好きだったんだ」

 うわ……凄く困った顔されてる。
「違う、千香だよ千香」
「えっ! あんた千香ちゃんが好きだったの?!」

 駄目だ。俺も動揺しているのか、ちゃんと伝わらない。
「これは……大変な事態だわ」

 さよちゃんの顔が、どんどん暗くなっていく。
「だーかーら、ツインテールは俺じゃなくて、千香の趣味なんだって」
「……あー、なるほど。千香ちゃんがツインテール好きなのね」

 やっと伝わった。
「あはは、いやーびっくりしたわ。あはははは」
「ちゃんと伝わって良かったよ……」

 さよちゃんが変に勘違いして、風紀委員からの風当たりがこれ以上キツくなるのは困る。
「じゃあ、いったん戻るよ」
「うん。じゃあね」

 良かった。さよちゃんが笑顔になっていた。

2.新聞部@部員募集中

「それでは、第1回新聞部緊急議会を開きます。
 司会進行は私、平井良太が務めさせていただきます」

 風紀委員室を出て、新聞部部室のドアを開けた瞬間に言い放ってやった。
 綾瀬部長と千香。この濃い2人から俺が主導権を得るには、不意打ちくらい必要だ。
「良太、いきなりどうしたの?」

 千香が目を丸くしているが、作戦通り。強引に話を続ける。
「議題その1。新入部員が入らないと、新聞部が廃部になります!」
「良太が頑張れば良いじゃない」

 千香が「だから何?」とでも言いたげな顔で俺を見てくる。
「その頑張りを無駄にしているのは、どこのどいつだっけ?」
「ふっ。過去のことは忘れたわ」

 いや、まだ1時間も経ってないから。
「この際、ツインテールじゃなくても、女子じゃなくても良いじゃないか。とりあえず、新入部員捕まえないと」
「えー、じゃあ良太がツインテールにしてよ」

 俺をツインテールにして、こいつは何がしたいんだろうか。
「綾瀬部長ー。何とか言ってやってくださいよー」

 不意打ちのアドバンテージが早くも無くなってしまったので、困った時の綾瀬部長頼み。
「そうね。良太君はツインテールよりも、ボブカットが良いんじゃないかしら」
「髪型の話じゃないです」

 頼ってみたものの、やっぱりダメだった。しかも、何で2人とも当然のように女装を指定するんだよ。
「冗談よ。こうなったら、おねーさんが可愛い美少年を勧誘してくるわ」
「やる気を出して頂いたところ申し訳ないんですが……」
「なぁに?」
「議題その2として、今週号の原稿が書き直しになりました」

 どっちかというと、こっちの議題の方が緊急だった。話す順番を間違えたかもしれない。
「それは、おねーさん悲しいわね。コラムなんか特に頑張ったのに」
「いや、そのコラムが原因なんですけど」

 綾瀬部長がちょっといじけてる。
「とりあえず、綾瀬部長は原稿書き直してください。
 で、俺と千香は部員勧誘の対策を考えます」

「えー! 私もやるのー?」
「やれよー!」

 こうして、新聞部の部員獲得作戦が始まった。
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ラノベ執筆の勉強中です。ファンタジー系好き。普段は同人ゲームとか作ってるド素人ですが、よろしくお願いします。ちなみに中身はアニメとゲーム好きなシステムエンジニアです。 好きな作品:スレイヤーズ、爆れつハンター

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