高槻東高校@新聞部

  スポーツ学校である高槻東高校に存在する、数少ない非運動系の新聞部。
  取材拒否にも負けず、悪名にも挫けず、学校新聞を発行しています。
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本文

2.新聞部@部員募集中-2

「平井良太……ちょっと、風紀委員まで来なさい」

 新聞部で部員獲得のための会議を行った翌朝。
 校門でさよちゃんが俺を一目見て、腕を引っ張り歩き出す。
 まぁ、無理もないか……もし、俺が風紀委員だったら、間違いなく今の自分に指導する。
 何故なら、今の俺の姿が金髪ツインテールにメイド服だから。


「で、あんたは何で、そんな格好で新聞配ってんのよ?」

 風紀委員室で、机を挟んでさよちゃんと対峙。今の俺は、刑事ドラマなんかで取り調べを受ける犯人みたいになっている。
「あー、昨日さよちゃんが部員の話してくれたよね」
「うん」
「あの話を千香にしたら……新聞部のインパクトが弱いって話になってさ」

 最初は、俺が新聞を手配りすると提案。それだけだとインパクトが弱いって、コスプレしろって話に。
 もちろん反対したけど、そんな普通の意見が千香に通るわけもなく。
「それで、その衣装?」
「あぁ。せめて戦場カメラマン風にって言ったんだけど、よく考えたらそんな衣装あるわけなくてさ」
「メイド服はあったんだ」
「あー、何故か綾瀬先輩が持ってた」

 俺としては、新聞部のロッカーからメイド服が出てきたことに一番驚いたんだが、一緒に金髪ツインテールのカツラを出されたことに比べれば、些細なことだった。
「まぁ、部員勧誘期間ってことで、大目に見るけどさ……ちょっと方針変えた方が良いんじゃない?」
「だよなー」

 この期間は、サッカー部やバスケ部などの運動系の部活も、ユニフォームでビラ配りをしている。
 メイド服がいくら目立っても、所詮は女装。ソフトテニス部女子のユニフォーム――スコートとサンバイザーの組合せには勝てなかった。
「そもそも、新聞部は他の部に無い、有利な点がいっぱいあるじゃない」
「……部長と副部長の変態っぷり?」
「それは何か有利に働くものなのかしら」

 ちょっとした冗談のつもりだったけど、さよちゃんの目が冷たい。
「ごめん、冗談です。うちの部に何か有利な点ってあったっけ?」
「いっぱいあるわよ。まず、学校内で新聞を発行していること」
「まぁ、新聞部だからね」

 新聞部が新聞を作らなければ、何部なのか本当にわからない。
「新聞って、紙だけじゃないでしょ」
「んー、校内放送とかってこと?」
「それじゃ放送部じゃない」

 まぁ、うちの学校に放送部なんて無いので、競合することはないけど、ちょっと違う気がする。
「せっかくうちの学校で唯一パソコンが使える部なんだから、WEB新聞とかやってみたら?」
「WEBかぁ……俺パソコンとか全然わからないしなー」

 原稿執筆のために綾瀬先輩が。イラストを描いたりするのに千香が、それぞれ部活でパソコンを使っている。
 校正用にも1台パソコンが割り当てられているけど、そもそも機械が苦手な俺。なので、原稿をプリントアウトして、紙で誤字脱字チェックをしていたりする。
「そこは誰かに協力してもらえばいいじゃない。少なくとも、そのメイド姿よりかは良いと思うけど」

 メイド服については、同感。もう2度と着たくない。
 ただ、うちの学校はパソコン部なんて無いし、パソコンに詳しい人なんて居るんだろうか。

「まぁ、WEBってのは一例よ。とりあえず、方針は変えてよね」
「うーん、わかった」

 WEB新聞……ベタだけど、有効であるからこそベタに成るわけで。
 とりあえず、メイド服を脱ぎ、放課後にWEB新聞の相談をしてみることにした。

2.新聞部@部員募集中-3

「WEB新聞? いやよ。めんどくさいし、ベタだし」

 放課後、早速WEB新聞の提案をしてみた結果。千香から予想通りの返事が来た。
「でも、部員獲得にも繋がるぜ」
「部員獲得って言うなら、何で今日メイド服で新聞配らなかったのよ」
「配ったよ! 配ったけど、瞬殺で風紀委員に強制終了させられたさ」
「そこは、上手くやりなさいよ」

 相変わらず、千香が無茶な要求を言ってくる。
「というわけで、綾瀬部長すみません。お借りしたメイド服はお返しします」
「そうなの? じゃあ、申し訳ないんだけど、クリーニングにだけ出してもらえるかしら」

 ――っ!

 クリーニング。
 俺があのメイド服をクリーニング屋に持って行き、店のおばさんに「何この服。いったい、何に使っているのかしら?」とか心の中で思われつつ、引きつった愛想笑いで受け付けされてこいというのか。
 そして、クリーニングが終わった後も、また違うおばさんに「あらいやだ。最近は高校生がメイド服なんて持ってるのね。まぁやらしい」何て思われつつ、受け取らなければならないのか。

「千香。一緒に行ってくれ……」

 だめだ。俺が千香と一緒にメイド服を持って行こうものなら、「まぁ、このコたちったら若いのにマニアックね」なんて、わけのわからない想像をされるかもしれない。
 そして、俺たちが店を出た後に、店員同士でニヤニヤされようものなら……俺には無理だ。耐えられない。

 いや、そもそも店員がおばさんとは限らない。
 もしも、高槻東高校の誰かがクリーニング屋でバイトしていたら、「平井良太はメイド服を着用するのが趣味」なんて濡れ衣を着せられるかもしれない。

 今なら、部員勧誘用のコスプレで通るかもしれないが、これ以上何かあると俺の高校生活が崩壊するかもしれない。
 だめだ……詰んだ。

「綾瀬部長」
「あら、なあに?」
「このメイド服、買い取らせてください」

 そうだ。もう、この服を買い取って処分しよう。それならクリーニングに出さなくても良い。

「ついに、良太が覚醒した!」
「良太君。もっと本格的な、ディティールにこだわったの紹介するわよ」

 違う……何かが違う。
「綾瀬先輩。やっぱり基本は黒ですけど、オレンジとかも良いんじゃないでしょうか?」
「水色も良いわよ。あと、カチューシャも良いけど、リボンもありね」

 ……

 どこからともなく取りだしたメイド服のカタログで、盛り上がる千香と綾瀬先輩。
 2人が俺の話を聞いてくれるまで1時間かかった。

 そして、何とか俺の発言の意図を伝え、クリーニングじゃなくても、家庭用の洗濯機で良いと了承を貰えた。
 ただ、家族に見つかったら何て言い訳すればよいのやら。


 大幅に脱線したけれど、メイド服を丁寧に畳んで鞄の奥底に隠し終わったところで、ようやく本題となるWEBの話になった。

2.新聞部@部員募集中-4

「で、本題のWEBの件なんだけどさ」
「あ、まだその話するの?」

 どうやら、千香の中では完結していたらしい。
「あぁ、やっぱり部活存続させたいし」
「それはわかるけど、WEB新聞って具体的に何をするつもりなの?」
「えっと、それは今の紙の新聞をスマホやタブレットから見れるようにして……」

 しまった。具体的な内容は考えてなかった。
「それで、どれくらいの効果が得られるの? WEB化するために必要な維持費とかはどうするの?」

 維持費? WEB新聞を作るのに、パソコン以外に必要なものがあるんだろうか。
「千香……維持費って?」

 とりあえず、おそるおそる聞いてみた。
「まず、サーバはどうするの? ドメインは? この部室にはLANとか敷いてないけど、どうするつもり?」

 凄い勢いで千香が俺に詰め寄ってくる。
 これは以前に、千香の描いてたイラストに「このキャラ何?」と不用意に聞いてしまった時の再来だろうか。
 あの時もなだめるのが大変だった。
「ちか……」
「何よ」
「いや、近いって言いたかったんだけど」

 背が低く細い身体の割に、意外と存在感のある膨らみ。
 その体温が俺に伝わるんじゃないかと思えるほどに、千香が近づいてきているのだが、興奮しているのか気づいていない。
「――きゃっ!」

 普段の彼女からは想像できないような、乙女チックな悲鳴をあげ、千香が俺から離れる。
「ごめん、とりあえず一度落ち着こうか」

 やばい。ちょっとドキドキしている。この俺が、この千香に。
 相手は千香だぞ。2次元と可愛い女子が大好きな、少し痛い少女。
 相変わらず、前髪で千香の瞳は見えないけれど、こっちを向いているのはわかる。
 今、彼女はどういう心境なんだろうか。

 ただ、残念ながら先ほどの千香の言葉は全く理解できなかった。
 わかったのは、千香が相当パソコンに詳しいということ。そして、効果うんぬんは置いといて、千香の言う維持費問題をクリアしないといけないということ。

 大きく一度深呼吸。
 よし、平常心。

「綾瀬部長。部費って余裕あるんでしたっけ?」
「んー、パソコンはおねーさんと千香ちゃんの私物だし、紙とプリンタのカートリッジ代くらいしか支出がないから、大丈夫よ」
「なるほど。維持費って、いくらくらいかかるんだろ」

 やっぱり千香に聞くしかないのか? さっきは不覚にもドキドキしてしまったが、同じ失敗はしない……と思う。
「あのね、良太。そういうことは、顧問の橋長先生に聞けば良いと思うんだけど」
「あ……そうだね」

 予想外に、千香が先に答えをくれた。
 けど、俺はまともに千香の顔が見れなかった。

2.新聞部@部員募集中-5

「失礼しましたー」

 職員室を出る。
 WEB新聞の課題としていた維持費。千香の言う、サーバとかドメインとか、よくわからないけど技術的なやつ。
 何故だかわからないが、顧問に話したら一発で解決してしまった。

 顧問からは、「待ってたよ。手続きしとくから頑張れ」の一言で終わってしまった。
 何で顧問の先生がWEB新聞のことを知っているのかわからない。
 こっそり、千香が手を回していてくれたんだろうか。さっきのは自作自演? いや、そんな感じには見えなかった。

「ただいま戻りましたー」

 釈然としないまま歩いていたら、すぐに部室に着いてしまった。
「良太君。橋長先生は何て?」
「いやー、学校のサーバと、無線ルータって言ってたかな? その一部を使えるように手続きしてくれるそうです」
「あら、やったじゃない。流石、橋長先生ね」

 橋長先生は定年手前のおじいさん。めったに部室にも来ないし、パソコンなんかも詳しくなさそうなんだけど……。
「良太、良かったじゃない」
「あ、あぁ」

 あれ? いつもの千香に戻ってる? それとも俺が勝手に舞い上がってただけなのか?
「とりあえずサーバが使えるようになったら、WEB新聞を公開するとして、WEBでどんなことがやりたいの?」
「それについては、おねーさんに提案があるわ」

 綾瀬先輩が急にやる気を出した。こういう時は、たいてい良くないことになるんだが。
「ふっふっふ。WEB新聞ということは、風紀委員のチェックなしに、自由に作れるわけよね」

 ……まさか。
「紙の新聞では出来ない、この学校のアンダーグラウンドを特集するわっ!」
「綾瀬部長! それです! それしかありません!」

 千香の目が輝きだした。
 やばい。これはやばいぞ。部員が一気に3人にまで減った、あの暗黒時代再来となる。

「じゃあ、おねーさんは取材に行って来るから、みんな後は適当にやっといて」
「任せてください!」

 いやいやいや、任せられないから。
「ちょっと、綾瀬部長。待ってください!!」

 叫んだものの、既に綾瀬先輩の姿はなく、部室で千香と2人きりにされてしまった。
 どうしよう。さっきの様子だと、いつも通りの千香のようにも見えたけど……。
 少し、千香の様子を見てみる。

 千香と目が合う。いや、正しくは合っている気がする。
 前髪で千香の目線がはっきりと見えないけど、間違いなく俺を見ている。

「ねぇ……良太」
「は、はい」

 千香が少しずつ近寄ってくる。
 その顔は少し紅くなっていて、興奮しているようにも見える。

「あのさ……言い難いんだけどさ」
「お、おぅ」

 また一歩、千香が近づいて来る。
 自分でもわけがわからないが、また胸がドキドキしだした。
 相変わらず千香の目は見えないけど、何故かつい唇をじっと見てしまう。 
 そして、千香の唇が僅かに開き、次の言葉が発せられる。
 
「男の娘の絵を描きたいから、メイド服着てモデルになって」
「却下!」

 やっぱり、いつもの千香だった。

2.新聞部@部員募集中-6

「ちょっと、平井良太! こっちへ来なさい!」

 デジャヴだろうか。つい最近、さよちゃんから同じようなセリフを聞いた気がする。
 嫌な予感しかしないが、大人しく従う。

 前回と少し違うのは、風紀委員室ではなく、その辺の空き教室に入ったこと。
 放課後ということもあり、誰も居ない。

「で、これは何かしら」

 さよちゃんの手にあるのは、淡いピンク色のスマートフォン。風紀委員らしく、デコったりはしていない。
「うん、1つ前の型のスマホだよね。さよちゃんはピンクが好きなんだね」
「そんなつまらない台詞は要らないわ。このWEB新聞について聞いているの」

 スマホに映し出されているのは、どうやらうちの新聞部のWEB新聞らしい。
 大きく「高槻東高校新聞」と見出しが出ている。

 昨日、千香の筋肉描写モデルを断った後、綾瀬先輩も戻って来ないので、17時に解散となった。
 そして、現在16時。新聞部員である俺すら知らない間に、WEB新聞が出来上がっていた。

「ごめん、とりあえずそのWEB新聞のURL教えて。こっちのタブレット端末で見てみるよ」

 新聞部の特権、タブレット端末。
 うちの学校は携帯電話は許可されているが、タブレット端末の持ち込みは原則禁止されている。
 しかし、新聞部は部活動に必要ということで、タブレット端末やデジカメなんかの持ち込みが許可されている。もちろん、放課後までは使用禁止だが。

 さよちゃんにURLを教えて貰い、端末に打ち込む。

 ……

 内容はかなり酷かった。
 記事もイラストも千香が書いたのだろうか。美少年と……いや、もういい。

 今まで風紀委員のチェックで抑圧されていたからなのか、去年の暗黒時代の比ではない。
 何時にこの新聞が公開されたのかはわからないが、今すぐ公開を中止させないと。
「ごめん、さよちゃん。まさかこんなことになるなんて」
「いいから、早くこれ消してきて! 新聞部本当に潰れちゃうよ?」

 確かに、こんな新聞を公開するような部に新入部員が来てくれるとは思えない。
 さよちゃんに礼を言って、部室へ走り出す。

 だけど、ここで1つ疑問が浮かぶ。何故、さよちゃんは俺も知らないWEB新聞のURLを知っていたんだろうか。

 一瞬疑問が浮かんだけれど、目的地である部室に到着。

「千香ぁー!」

 叫びながら、勢いに任せ部室に飛び込む。

「あらあら良太君、青春ごっこ? 千香ちゃん、今日はお休みよ」

 綾瀬先輩から、最悪の回答が返ってきてしまった。
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ラノベ執筆の勉強中です。ファンタジー系好き。普段は同人ゲームとか作ってるド素人ですが、よろしくお願いします。ちなみに中身はアニメとゲーム好きなシステムエンジニアです。 好きな作品:スレイヤーズ、爆れつハンター

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