「千香ー、うそだろー」
千香が休みと聞いて、思わず座り込む。
まずい。ここに千香が居ないということは、自宅からWEB新聞を作ったということになる。
一刻も早くWEB新聞を止めたい。けど、それには千香の家に行かなくてはならないということか。
「あらあら、良太君は千香ちゃんが居なくて、そんなに悲しいのね。
おねーさん、妬いちゃうわ」
とりあえず、綾瀬先輩の戯言は無視。
この新聞部の危機をどうやって乗り越えるか、頭をフル回転させる。
千香に電話でWEB新聞を消させる……けど、こんな短時間でWEB新聞を作ったんだ。相当、無理したに違いない。
学校を休んだのは、おそらく本当に体調不良。そんな千香に、電話で作った新聞を消せなんて言えるだろうか。
仮に、心を鬼にして言ったとして、あの千香が俺の電話で素直に新聞を消すだろうか。
「ねえねえ、良太君。そんなに真剣な顔して、千香ちゃんのこと考えてるの?
おねーさんのことも見てよー」
はいはい、また後で見ます。
そもそも、千香が体調不良で寝ているのであれば、電話はまずい。流石に安静にしておくべきだろう。
なら、メールを送ってみようか。けど、それじゃ千香がメールに気付かず、ずっと新聞を放置される可能性もある。
「もー、良太君ってば。そんなに千香ちゃんが心配なら、お見舞いに行けばいいじゃない」
ぶほぁっ!
「な、何ですか、お見舞いって」
「あら、やっとおねーさんを見てくれたわね」
「って、何で服脱いでるんですか!」
ずっと考えこんでて気付かなかったけど、綾瀬先輩が何故かセーラー服を脱いでる途中だった。
「だって、良太君が構ってくれないしー。おねーさん、寂しいしー」
この人は寂しいと脱ぐのか? 相変わらず、行動パターンが読めない。
「えっと、話を戻しますけど、家に行くのはまずくないですか?」
「あら、何故かしら?」
「いや、だって俺男ですし」
流石に、年頃の女の子の家に男が1人で行くのはまずいだろ。
「あらあら、良太君は1人で行きたいのね。おねーさん、仲間はずれー。すねちゃうわよ」
「えっ……あ、あぁ、そうですよね。一緒に行きますよね」
あ、ほんとにいじけだした。
「いいのよー。おねーさん、部室で1人寂しくWEB新聞の更新しとくからー。
千香ちゃんとらぶらぶして来なさーい」
らぶらぶって……。
「ん? 綾瀬部長、WEB新聞の更新って言いました?」
「言ったわよー」
急いでタブレット端末を取り出す。
「もしかして、このWEB新聞って、綾瀬部長が作ったんですか?」
「そうよー。おねーさん、頑張ったんだからー」
あんたが犯人ですか……。